紅葉に彩られた榛名富士。その美しい山容は地元の人々を魅了し続けている =群馬県高崎市(鴨志田拓海撮影)
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光の加減や空の色、雲の形、影の濃淡、湖面の静けさ-。夜明けから日没まで刻一刻と表情を変える山容に心を奪われながらシャッターを切っていった。

群馬県高崎市にある榛名山。赤城山、妙義山とともに「上毛三山」と呼ばれ、地元の人々に親しまれている。

ただ、市観光協会によると、榛名山という名の山は無く、最高峰の掃部ケ岳(かもんがたけ)(標高1449メートル)を中心に連なる山々の総称だという。

その一つに広さ1・49平方キロメートルのカルデラ湖、榛名湖を見下ろすように鎮座する標高1391メートルの山が、シルエットが富士山に似ているところから「榛名富士」とも呼ばれている。
近くの榛名神社は、開運や五穀豊穣(ほうじょう)などに御利益があるパワースポットとして知られ、休日には多くの人でにぎわう。

「昔は、榛名に行くということは登山ではなく、榛名神社にお参りに行くことを意味していました」と、元榛名町誌編纂(へんさん)室長の清水喜臣(きおみ)さん。今はワカサギやブラックバス目当ての釣り人に人気の榛名湖も、かつては禁漁だったという。

観光客に広く親しまれるようになったのは大正13年頃から。湖を含む山々が県立公園に指定され、市民の憩いの場として定着した。昭和に入ると、キャンプ客が集まり、たくさんのテントが並ぶ様子が「登る榛名のキャンプ村」と、郷土かるた「上毛かるた」に詠まれるほどのブームになった。
群馬県内の山々を撮り続けているという同県安中市の武井正雄さんは「時間によって姿を変えるところがこの山の魅力」と笑顔で話す。榛名山は、どんな時もいつの時代も、その折々のありようで人々を魅了している。

筆者:鴨志田拓海(産経新聞写真報道局)
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2024年11月25日産経ニュース【ふるさと富士】を転載しています
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