山上徹也被告を乗せて奈良地裁に入る車両=10月28日午後、奈良市(川村寧撮影)
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令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われている山上徹也被告(45)の裁判員裁判の初公判が10月28日、奈良地裁(田中伸一裁判長)で開かれた。
初公判は午後2時ごろに開廷。被告は長髪を後ろで結び、黒のトレーナーとズボン姿で法廷に現れた。
罪状認否で、起訴内容について「全て事実です。私がしたことに間違いありません」と述べた。
起訴状によると、令和4年7月8日、奈良市で参院選の応援演説中の安倍氏を手製のパイプ銃で撃ち、殺害したなどとしている。殺人罪のほか、銃刀法違反、武器等製造法違反、火薬類取締法違反、建造物損壊の計5つの罪で起訴されている。

弁護側は殺人罪は認める一方、被告の手製銃を巡り、銃刀法違反の「発射罪」の成立などは争う方針を示した。
被告は捜査段階の調べに、母親が旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)に多額の献金をしたことで生活が破綻したと説明。安倍氏は過去に教団の友好団体にビデオメッセージを寄せるなどしており、「教団に恨みがあり、関係がある安倍氏を狙った」などと供述したとされる。
弁護側は、事件の背景に母親の入信による「宗教虐待」といえる状況があり、事件はあくまで政治的なテロではなく、個人的な恨みを晴らすための犯行だったという点を強調する見込みだ。今後母親らも法廷で証言する。

一方、検察側は冒頭陳述で、当初は旧統一教会の最高幹部を狙って自作銃を用意していたが、事件直前に無職となったため、「金銭に余裕があるうちに銃撃を実行しよう」と考え、安倍氏に標的を切り替えた経緯を明らかにした。
検察側は「母親が旧統一教会に傾倒したことに安倍氏は何ら関係がない。被告もそのことを認識していたのに、旧統一教会への批判を高めるためだけに殺害を企てた」と訴えた。
被告の生い立ちにおける教団の影響は認めつつも、検察側は犯行の悪質性や危険性、計画性、さらに被告の心理状態などを立証するとみられる。
公判は最大で全19回。11月20日~12月4日の計5回の期日で被告人質問が予定されている。同18日に結審し、判決は来年1月21日。
(産経新聞、JAPAN Forward)
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