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鈴木憲和農林水産相による「需要に応じた生産」という方針が、コメ増産に舵を切った石破茂前政権からの転換と受け止められ、コメ農政に混乱がみられている。
Rice policy rice prices

2025年産米が5キロ4千~5千円台で売られているスーパー「フレッシュマーケットアオイ昭和町店」=11月11日午前、大阪市阿倍野区

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農業を持続可能な形で再生・強化し、コメを含む食料を将来にわたって適切な価格で安定的に供給する。農業生産者、消費者のいずれも、その重要性には異論がないだろう。

ところが、そのためのコメ農政に混乱がみられるのはどうしたことか。鈴木憲和農林水産相による「需要に応じた生産」という方針が、コメ増産に舵(かじ)を切った石破茂前政権からの転換と受け止められていることである。

保管倉庫から搬出される備蓄米=3月、埼玉県内

新米の流通で供給が増えても米価は高いままで、足元では5キロの平均価格が4444円まで高騰した。消費者の負担感の大きさは一向に解消されず、コメ離れも進みかねない状況だ。それなのに農政に揺らぎがみえるようでは、生産者や消費者の安心や納得感は得られまい。

高市早苗政権は経済対策で自治体の「おこめ券」発行を促す考えだが、一時的な対症療法にすぎない。肝心なのは生産者の収益を確保しつつ、行き過ぎた米価高騰を確実に抑制することだと銘記してもらいたい。

農水省は令和8年産の需給見通しで生産量目安を711万トンとした。政府備蓄米の購入分を加えても748万トンの収穫を見込む7年産より減産になる。

二期作目の背丈の低い稲。収穫量は一期作目の約4割だという=11月12日、千葉県柏市(鈴木貴之撮影)

需要が見込めない中でむやみに増産すれば、価格が暴落しかねないという生産者の不安はわかる。ただ、鈴木氏の言う「需要に応じた生産」は、米価維持のために作付けを減らしたかつての減反政策を想起させる。

令和のコメ騒動は農水省が需要動向を見誤り、コメ不足に陥ったことが主因だ。需給均衡に向けて生産を抑制してきた農政の限界が露呈したからこそ、増産路線に転じたのではなかったか。担い手不足が進む中でコメを安定的に供給するには、増産に意欲的な農業者の支援に農政の軸足を置くのは理に適(かな)う。

鈴木氏自身、輸出を含めて需要拡大を図る中で、増産に取り組む意向を示している。ただし価格については関与しない姿勢だ。需給が安定すれば価格も安定するという考えだが、それにより生産者だけでなく消費者が納得できる価格となるのか。

鈴木氏には消費者目線も踏まえ、現在のような深刻な高値を抑えるための方策を具体的に語ってほしい。「おこめ券」という急場しのぎだけでは、生産者に配慮して高値を容認しているとみられても仕方あるまい。

2025年11月16日付産経新聞【主張】を転載しています

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