輸出拠点の横浜港で船積みを待つ自動車
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トランプ関税の影響が本格化すれば経済を下押しするのも当然なのだろう。7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、6四半期ぶりにマイナスに陥った。年率換算で1・8%減である。
この流れを長引かせず、再び経済を成長軌道に戻せるかが肝心だ。米国の高関税政策だけでなく、食料品などの物価高も経済に重くのしかかる。国内投資や賃上げに向けた企業努力はもちろん、これを支えるべき高市早苗政権の責任も大きい。近く策定する総合経済対策で、真に効果的な施策を講じられるかが問われる。
7~9月期は住宅の省エネ基準の規制強化に関連して住宅投資が悪化したが、輸出についても自動車の減少が響いて1・2%減に落ち込んだ。米国の自動車関税が27・5%から15%に引き下げられたのは9月16日である。10~12月期は影響が和らぐだろうが、かつての2・5%と比べると税率はなお高い。
実際、9月中間連結決算で自動車7社の利益を押し下げたトランプ関税の影響額は合計約1・5兆円だったが、下半期の見通しも計1兆円強と高水準なことに変わりはない。自動車は産業の裾野が広く、経済全体への影響にも警戒が怠れない。

米ホワイトハウスで「相互関税」の詳細を発表するトランプ大統領=4月3日(ロイター=共同)
トランプ米大統領は高関税に起因する米国内の物価高への不満に配慮する形で、幅広い農畜産物を相互関税の対象から外した。もとより、米国の物価高が景気悪化を伴えば、自動車に限らず日本企業の打撃は一段と大きくなろう。低迷が続く中国経済や為替動向などにも細心の注意を払わなければならない。

一方、7~9月期のGDPでは企業の設備投資が1・0%増だった。人工知能(AI)、半導体などの需要が拡大する電機業界や、デジタル化投資の需要がある情報通信業界などは業績を向上させている。企業の積極的な経営努力で国内経済を牽引(けんいん)することに期待したい。
物価高が深刻化する中、個人消費が0・1%増と低迷したことは懸念材料だ。ただし、消費が底割れするほどの悪化ではない。人手不足などで経済の供給力が低下する中、低所得層などに対象を絞ることもなく、やみくもに需要を刺激する物価高対策はインフレを助長しかねないことにも留意すべきだ。高市政権の総合経済対策に求めたいのは規模ではなく中身である。
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2025年11月18日付産経新聞【主張】を転載しています
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