東京都のマッチングシステムで結ばれた新川登志朗さん、史帆さん夫妻(提供写真)
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深刻さを増す少子高齢化問題に対し、東京都は小池百合子知事の号令のもと、これまでさまざまな政策を繰り出してきた。その一環で結婚を希望する男女に出会いの場を提供しようと昨年9月に本格始動したのが、都独自のAI(人工知能)によるマッチングシステムだ。これまで真剣交際に発展し、結婚にまで至ったのは今年9月末現在で94組。うち、実名と顔出しで取材可能な新婚カップルが出会いからの流れを振り返ってくれた。都はさらに交際の輪を広げようと、リアルでのイベント開催にも力を入れている。
最大の出会いの場
都は少子化対策として、出産や乳幼児期、学齢期など子の成長に合わせて必要になる支援を強化してきた。都が展開するマッチングシステム「TOKYO縁結び」は、スマートフォンのアプリやパソコンのブラウザーから利用でき、プロフィルや相手に求める条件などを入力するとAIが候補を紹介。互いにマッチングすると実際に合うこともできる。こうした出会いの場の提供もまた、少子化対策の一環という側面を持つ。
こども家庭庁が昨年、全国の15~39歳の男女を対象に行ったアンケートによると、既婚者のうちマッチングシステムが出会いのきっかけだったという回答は全体の25・1%に達し、「職場や仕事の関係、アルバイト先」(20・5%)、「学校」(9・9%)など生活に身近な場を抑えて全体のトップになった。もはや、男女の出会いの場のスタンダードだ。
「やっぱり、都がやっているアプリだから安心感が違いました」
TOKYO縁結びで結ばれた新川登志朗さん(35)と史帆さん(32)夫婦は、そう口をそろえる。お互い、民間業者ではなく自治体が主体となっているのに加え、民法が定める「重婚の禁止」に違反しないことを証明する「独身証明書」の提出が必須であるという厳格さに「やってみよう」と背中を押されたのだという。
2人の出会いは今年の2月。以降、AIが探し当てた相性や価値観がぴったりの相手ということもあってか、急接近して3カ月後の5月には登志朗さんがプロポーズ、7月に入籍の運びとなった。現在、都内で新婚生活を送っている。
お互いのどこにひかれたかなどの質問が飛ぶ間も、しっかりと握られた2人の手が印象的だった。
18歳以上が利用可能で、今年9月末までの累計利用者数は2万7千人以上。うちゴールインしたのは全体の男女の約0・7%に当たる94組。
「きっかけを提供」
運用開始から丸1年となる9月の知事定例会見で小池氏は、成果が出ていることの受け止めを問われ、「きっかけを与えて提供できているということではないかと思っている」と答えた。前述のこども家庭庁のアンケートによれば、そもそも未婚者のうち結婚の意向がありながら交際相手のいない人の約5割が結婚に向けた行動を「全くしていない」とも回答している。都が今までなかったサービスを始め、それを知って踏み出す動きが生まれたのであれば、意義は大きい。
都は「TOKYO縁結び」と同時進行で、直接対面で意中の人を探す交流イベントなどもたびたび開催。来月22日午後0時半からは、婚活に役立つ情報を無料で提供する「TOKYO結婚おうえんフェスタ」を有楽町駅前広場で開催する。これらに取り組む生活文化局の担当者は「まずは都の事業をきっかけに、自身のニーズにあった方法を探していただければ」と呼びかけている。
筆者:宇都木渉(産経新聞)
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