総合経済対策が閣議決定し記者団の取材に応じる高市早苗首相=11月21日午後、首相官邸(春名中撮影)
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物価高に苦しむ国民への支援で「景気の体感温度」を高める。成長に資する投資で強い経済を実現する。高市早苗政権が、そのための積極財政路線を経済対策で具体化した。
日本経済は長期デフレを脱して成長型経済へと移行できるかの岐路にある。だからこそ、財政で経済再生を後押しするという高市首相の狙いはうなずける。
そうであっても大盤振る舞いが過ぎないか。閣議決定した経済対策の規模は減税効果も含め21兆円を上回る。現在はかつてほどの需要不足はなく、財政で需要を刺激する必要性は大きくない。効果や財源、財政膨張に対する市場の懸念などを十分に吟味したかも疑わしい。
自民党の内外では、大規模な対策こそが「高市色」だと期待する声もあったが、規模ありきで財政を膨らませたのならば残念だ。首相は「責任ある積極財政」に徹すべきである。

物価高対策▽危機管理投資・成長投資▽防衛・外交力強化―が3本柱だ。来年1~3月の電気・ガス料金補助で計7000円程度の負担減を図るほか、自治体への交付金でおこめ券などの発行を促す。ガソリン税の暫定税率廃止なども盛り込んだ。
子供1人当たり2万円の給付策も加わった。自民党は参院選で公約した現金給付で、子供などに2万円を上乗せする案を示していたが、高市首相は自民惨敗を踏まえて撤回していたはずだ。それが結局は子供に限って実施することにした。
ただ、一連の手厚い対策が物価高抑制にどれほど有効かは冷静にみたい。例えばおこめ券は急場の家計支援とはなろうが、今の異常な高値水準の固定化につながりかねない。

気がかりなのは市場の動きだ。最近、財政拡張路線を警戒し、円安や長期金利の上昇が顕著となる場面もあった。円安で輸入物価が上昇すれば一段の物価高を招く。金利上昇は首相が重視する投資にはマイナスに働く。そうなれば本末転倒だ。
首相は財政運営を巡り、基礎的財政収支の黒字化目標を見直す意向も表明している。単年度の収支目標に縛られず、機動的に財政運営ができるようにする仕組みを検討中だが、目標の見直しが財政膨張につながれば市場の信認が一段と低下しかねない。そうした懸念をいかに拭えるかも首相は問われている。
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2025年11月23日付産経新聞【主張】を転載しています
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