南アフリカでG20サミットに出席する高市早苗首相=11月22日(ロイター)
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高市早苗首相は11月23日午後(日本時間同日夜)、南アフリカで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の2日間の日程を終えた。1泊4日の強行軍で出席した狙いの一つは対面していなかった首脳らに多く会うことで、その目的は達成した。焦点だった中国の李強首相との接触は実現せず、関係改善の契機にはならなかった。首相は24日夜に帰国した。
大勢の首脳が高市首相に近寄る
首相は23日の討議の前後などに、参加国の首脳らと立ち話も含め言葉を交わした。22日を含め、計25人ほどの参加国首脳や国際機関代表と会話。22日にはイタリア初の女性首相のメローニ氏と初対面を果たし、笑顔で抱き合った。大勢の首脳らが高市首相にあいさつしようと近寄る光景がみられた。

首相は22日に英国のスターマー首相、23日にインドのモディ首相やドイツのメルツ首相と初めて対面で個別会談した。スターマー氏とは東アジア情勢などの課題に対し「日英が緊密に連携する」と確認した。中国への言及もあったという。
高市首相は23日の討議で、重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の過度な集中を避け「強靱で信頼できるサプライチェーン」を構築すべきだと訴えた。中国が世界生産の約7割を占めるレアアース(希土類)の対日禁輸に踏み切る可能性も念頭に、アフリカなどの資源国と協力を進めたい考えだ。
中国は台湾有事と存立危機事態を巡る首相の国会答弁を受け、日本への威圧を強めている。首相は中国を意識した外交を展開したが、李氏と直接の対話はなかった。首相は23日のサミット閉幕後、同行記者団に「わが国は扉を閉ざすようなことはしていない。その中で主張すべきことは主張するのが大事だ」と強調した。
首相「中国と調整していない」
22日には、参加国首脳らの集合写真撮影の直前、首相と李氏が2メートルほどの近距離で並んだ際に一瞬目が合ったようにも見えたが、李氏は逆方向に顔を向けた。2人とも近くの他の首脳らとにこやかに握手や会話をしており、日中の両首脳の間にだけ不自然な空気が流れている印象だった。

とはいえ、接触しても大きな成果は見込めなかった。首相としては自身の答弁に関し、日本の台湾に対する立場に変更はないと説明し、冷静な対応を呼びかけるのが限度だった。発言撤回要求に応じれば、中国の圧力を受けて集団的自衛権行使の範囲を狭めたことになりかねないためだ。
日本政府内にも、対話を拒む相手に強引に接触する必要はないとの意見があり、首相も「あらかじめ中国と調整は行っていない」と述べた。
同行した尾崎正直官房副長官は記者団に「高市首相と接触の機会を持ちたいと(中国以外の)多くの首脳が思っていると感じた。かなりのスピード感で関係を強化した」と成果を強調した。
筆者:田中一世(産経新聞)
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