高市早苗首相らが出席した南アフリカでのG20首脳会議は、トランプ米大統領の出席拒否による米国の不在が禍根を残し、分断が深刻化した。
G20 South Africa 2025 leader's photo

G20サミットで記念撮影に臨む高市早苗首相(前列左から5人目)ら=11月22日、南アフリカのヨハネスブルク(ゲッティ=共同)

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多国間協力の場というには程遠い。20カ国・地域(G20)の分断が深刻化した。G20の存在意義低下はかねて指摘されていたが、その傾向が一段と強まったのならば残念だ。

高市早苗首相らが出席した南アフリカでのG20首脳会議は、トランプ米大統領の出席拒否による米国の不在が禍根を残した。

象徴的なのが首脳宣言を巡る対立だ。議長国である南アのラマポーザ大統領は会議初日の冒頭に宣言を採択した。本格討議の前に採択したことも、通常は全会一致の宣言を米国抜きで出したことも異例である。

宣言を出さないよう求めていた米国は反発した。トランプ氏は11月26日、米国が議長国を務める来年のG20で南アを排除する意向をSNSに投稿した。南ア大統領府は声明でこの投稿を批判した。泥仕合の様相である。

G20サミットで演説する南アフリカのラマポーザ大統領=11月22日、南アフリカ・ヨハネスブルク(ロイター=共同)

南アはアフリカで初めて開いたG20で宣言を出せない事態を避けたかったのだろう。それでも、米国に配慮する声が会議で出ることを封じるように宣言を急いだのはかなり強引だ。

ただし根本には、国際協調に後ろ向きなトランプ政権の姿勢がある。トランプ氏は南アが白人の人権を侵害していると一方的に主張する。首脳宣言案に米国の政策と相いれない気候変動対策などが含まれることにも反発し、米政府は会議に加わらなかった。だが本来なら、トランプ氏が会議で宣言に反対するのが筋だろう。

南アフリカでG20サミットに出席する高市早苗首相=11月22日(ロイター)

米中対立の一方で、米国と南アなどのグローバルサウス(新興・途上国)の溝も深まれば中国を利することにならないか。中国の李強首相はG20で、米国を念頭に「一国主義や保護主義が騒ぎ立てられ経済・貿易の制限や対立が増えている」と述べた。自国が経済的威圧をやめないことなどどこ吹く風だ。

懸念するのは、米国への反感が強まる状況で中国の身勝手な主張がまかり通ることだ。国際社会での存在感が増すグローバルサウスが中国と歩調を合わせるのは避けたい。米国はその点も踏まえて行動すべきだ。

高市首相はG20会場で積極的に首脳外交を展開し、英国やドイツ、南ア、インドとは個別の首脳会談も行った。日本には米国がG20内で孤立しないよう促す役割も期待される。高市首相は今後、そのための指導力を発揮する必要がある。

2025年11月28日付産経新聞【主張】を転載しています

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