同性婚を巡る訴訟の控訴審判決を受け、東京高裁前で悔しさをにじませる原告ら=東京都千代田区(寺河内美奈撮影)
This post is also available in: English
同性婚を認めない民法などの規定について東京高裁は「合憲」との判断をくだした。
社会の根幹を成す婚姻制度は歴史的、伝統的に男女間を前提としていることを明確にし、妥当だ。
訴訟は同性カップルや性的少数者ら8人が国に計800万円の損害賠償を求めた。民法や戸籍法の規定が婚姻の自由や法の下の平等を定めた憲法に反すると訴えていたが、退けられた。
判決では、憲法24条1項で「婚姻は両性の合意のみに基づき成立する」と謳(うた)っていることについて「歴史的、伝統的な婚姻形態である異性同士の人的結合関係」を規定したとし、「同性の者同士が憲法上『婚姻』の自由を保障されているとはいえない」と判示した。
憲法前文で「われらとわれらの子孫のために」と書いていることなどにも触れ、社会を維持するために、婚姻制度は男女が子供を産み育てることを前提としていることに、合理性があると認めた。
今回の東京高裁判決は歴史的に形成された社会の考え方を踏まえ、憲法を自然に解釈し、理にかなう。
全国5高裁6件の同種訴訟の控訴審で、これまで5件連続で「違憲」の判断が出たことに改めて首をかしげる。

早ければ来年にも最高裁で統一的な判断が出される見通しだが、違憲判断の中では憲法が制定当時、「同性婚」を想定していなかったにもかかわらず「両性」を2人の間と読み替え、憲法は同性婚を禁じていないとするなど、矛盾ある無理な解釈が目立っていた。
仮に同性婚を想定しない憲法が時代に合わないというなら、憲法を改正するのが筋だろう。憲法の条文を都合よく解釈する牽強付会(けんきょうふかい)な判断は、司法の役割を越えていなかったか。

今回の判決では疑問な点もある。「合憲」判断の一方で、現代では同性婚が「一つの家族の姿として承認を受けている」とした。国会での立法議論を促したかたちだが、国民の合意を得た慎重な議論を求めたい。
性的少数者への差別解消や権利擁護が必要なのはいうまでもないが、民法などの結婚や家族に関する規定は伝統や慣習を立法化したもので、国民一人一人の家族観とも密接に関わることを忘れてはならない。
◇
2025年12月4日付産経新聞【主張】を転載しています
This post is also available in: English

