ほうじ茶スイーツが熱い。強火で焙煎された香ばしい茶葉は、クリームやバターと相性抜群。インバウンドの間でも、日本茶の象徴として定着しつつある。
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ほうじ茶あんこ味(右)と、玉露ガーリックしば漬け味の「ぶぶるさんど」(祇園辻利提供)

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今、ほうじ茶スイーツが熱い。強火で焙煎(ばいせん)された香ばしい茶葉は、クリームやバターと相性抜群だ。抹茶ブームを牽引(けんいん)してきた老舗専門店も、相次いでほうじ茶パフェなどを定番化。インバウンド(訪日客)の間でも、日本茶の象徴として定着しつつある。

苦味なく、クリームと相性抜群

ふわりと甘い生クリームの下に、香ばしいほうじ茶シフォンケーキ。栗の甘露煮、甘酸っぱいベリー、ポン菓子、大納言小豆(あずき)…と器の奥へスプーンを進めると、つるんとしたほうじ茶ゼリーにたどりついた。

江戸末期の安政元(1854)年創業の老舗茶商、中村藤吉本店(京都府宇治市)。東京の銀座店などで味わえる、ほうじ茶味の「まるとパフェ」(2180円)は、茶葉から多様な風味を引き出して作る。シフォンケーキはふんわりとやさしく香り立ち、ゼリーは鼻から抜ける香りの高さが生茶を思わせる。

中村藤吉本店の、ほうじ茶味のまるとパフェ。老舗のこだわりが、ひとつの器に詰まっている=東京・銀座(酒巻俊介撮影)

銀座店の深松ゆい店長は、「お茶の味わいをぎゅっと濃縮したような、素材の良さが引き立つパフェになっている」と手応えを語る。洗練された見た目がインスタグラムなどで話題となり、こみ合う日は、昼どきに入店まで1時間以上かかることもあるという。

来店客の半数以上を占めるのがインバウンドだ。海外では数年前から抹茶が爆発的なブームとなっているが、最近はほうじ茶を嗜(たしな)む人も増えつつあるという。

「ほうじ茶はカフェインが少なく、コーヒーや紅茶のように風味がすっきりとしている。抹茶の苦みが苦手だという外国人の方も、ほうじ茶スイーツなら親しみやすいのではないか」と深松さんは分析する。

大豆バターでビーガンに対応

国内外の観光客が行きかう京都駅。新幹線改札口の真横にある小さな喫茶店「ぶぶる」の定番メニューは、ほうじ茶あんこ味の「ぶぶるさんど」(350円)だ。カリッとしたパンと、口の中でとろける大豆バターの両方に、香ばしい茶葉が練り込まれている。

「ぶぶる」は万延元(1860)年創業の老舗、祇園辻利(京都市)が令和5年に立ち上げた新ブランドで、定番の抹茶ではなく、ほうじ茶などの「揉(も)み茶」を軸としたスイーツを開発してきた。

抹茶の原料となる「碾(てん)茶」は蒸した茶葉をそのまま乾燥させるのに対し、「揉み茶」は蒸した茶葉を揉みながら火入れや水抜きを行う。火入れの温度加減などによって風味を微調整できるのが特徴だ。

「茶葉を専門に扱ってきた老舗ならではの技術で、サンドに合う香りを追求した」と松田美菜穂店長。直径およそ6センチ、見た目は小ぶりなバーガーで、観光客から「かわいい」「新幹線の中にも持っていきやすい」と反響があるという。インバウンドの増加を背景に、ビーガン(完全な菜食主義)の人も楽しめるよう、植物由来の大豆バターを使用しているのもポイントだ。

健康志向高まり、日本茶ブーム拡大

日本茶は北米やヨーロッパを中心にファンを増やしている。財務省貿易統計によると、令和6年、緑茶の輸出額は前年比25%増の364億円で、5年連続で過去最高を更新した。今年は10月までで539億円と前年を大幅に上回っており、さらなるブーム拡大が見て取れる。

抹茶の世界的な人気については、調査会社のグローバルインフォメーション(川崎市)が、茶道の認知拡大や健康志向の高まりを挙げている。スイーツ人気を追い風に、ほうじ茶が日本茶の代名詞・抹茶に追随する日も近いかもしれない。

筆者:永礼もも香(産経新聞)

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