正和堂書店が牛乳石鹼共進社とのコラボで制作した「赤箱」のブックカバーが、11月1日の「本の日」に合わせたプロジェクトの一環で、初めて台湾で配布された。日本ならではのブックカバーを海外で目にする日も近そうだ。
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台湾のブックフェアで配布されるブックカバー

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街の書店が手がけたブックカバーが海外に進出-。正和堂書店(大阪市鶴見区)が牛乳石鹼共進社(同市城東区)とのコラボで制作した「赤箱」のブックカバーが「本の日」(11月1日)に合わせたプロジェクトの一環で、初めて台湾で配布された。用意した3千枚が初日になくなる人気で、12月から別のデザインを含む2万枚の追加配布が決定。日本ならではのブックカバーを海外で目にする日も近そうだ。

本の日に合わせた牛乳石鹼のブックカバープロジェクトは3回目。今年は「赤箱」のブックカバーとしおりのセットを2種類用意し、文庫本の購入者に配布した。年々規模が拡大し、今年は国内748店が参加。台湾を代表する大型書店チェーンの一つ「誠品書店」の10店舗も加わった。

「赤箱」のブックカバーを受け取る来店客=11月1日、大阪市鶴見区の正和堂書店

正和堂書店では近年、海外からの来店が増えていることを受け、誠品書店にプロジェクトへの参加を呼びかけた。「本部にメールを送ったら、SNSで取り組みを知っていて『ぜひ参加したい』と返事が来て驚いた」と3代目の小西康裕さん(39)は振り返る。

だが、現地では文庫本より大きいA5判の本が一般的で、カバーのサイズが合わないことが判明。全店舗での展開を視野に入れていた誠品書店に対し「ありがたいが、まず10店舗からにしてもらった」と明かす。

店に設置した日本地図と世界地図を紹介する正和堂書店の小西康裕さん=大阪市鶴見区

「赤箱」が後押し

誠品書店が興味を示したのは、電子書籍の普及などに伴い日本と同様に「紙の本離れ」が進んでいるからだ。売り上げ増につながる取り組みを模索する中で、本の日の存在や地域活性化に向けた企業とのコラボ、大学で美術を専攻した小西さんがブックカバーをデザインするようになった経緯といった「プロジェクトの背景にも注目しているようだ」と小西さん。

誠品書店の10店に300枚ずつ割り当てられた計3千枚は初日に配布が終了。台湾では珍しい文庫本サイズの本を購入する人が相次ぎ、出版関係者に感謝されたという。

牛乳石鹼共進社の担当者によると「台湾では30年ほど前からスーパーやドラッグストアで商品を購入できる」といい、ブランドの知名度も後押しになったとみられる。

さらに誠品書店は、12月から2026年2月にかけてのブックフェアでもカバーの配布を希望。正和堂書店は牛乳石鹼のほか、ビール、ワッフル、クリームソーダをデザインしたカバー計2万枚を、現地の本に合うようリサイズして送る計画だ。

みやげでも人気

正和堂書店では文庫本サイズを中心に、デザイン性の高いブックカバー約70種を取り扱う。カバーを目当てに全国各地から多くの人が来店する。中心は20~40代の女性客で「遠方からのお客さんはせっかく来たからと、たくさん本を買ってくれる」(小西さん)効果も。文庫本の売り上げが飛躍的に伸びている。

国内にとどまらず台湾や香港、韓国からの観光客も毎週のように訪れる。小西さんは「書店で配布するブックカバーは海外にはないようだ」と指摘。本の汚れを防ぐ実用性にとどまらず、ユニークなデザインが好評といい、日本みやげとして購入する人が目立つ。

誠品書店の参加をきっかけに、台湾でもブックカバーが広がるかもしれない。カバーを手にした人の反応を楽しみにしているという小西さんは「現地のクリエーターと一緒に、夜市のネオンサインやパイナップルケーキなど台湾らしいモチーフのカバーを作ることができれば」と期待を寄せる。

筆者:北村博子(産経新聞)

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