将棋の福間香奈女流六冠が、出産予定日の前後に重なる女流タイトル戦を事実上の不戦敗とする対局規定について、日本将棋連盟に改善を要望し、連盟は規定の削除を決めた。
shogi champion Kana Fukuma

Female professional shogi player Kana Fukuma is shown at a December 10 press conference in Osaka. (Sankei by Hirofumi Kakidaira)

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将棋の福間香奈女流六冠が、出産予定日の前後に重なる女流タイトル戦を事実上の不戦敗とする対局規定について、日本将棋連盟に改善を要望し、連盟は規定の削除を決めた。

規定は、対局か出産かの二者択一を迫るような内容で、女流棋士への配慮に欠けていた。見直しは避けられなかった。日本将棋連盟は「より良い制度と運営体制の構築に全力で取り組む」とコメントした。

連盟は今年4月、タイトル戦での妊娠・出産に関する規定を女流棋士に通知した。出産前後の計14週とタイトル戦の日程が1日でも重なれば、対局者を変更するとしていた。

仮にタイトル保持者が該当すれば、戦わずして失冠することになる。母体の健康とタイトル戦の運営を両立するための措置としても、妊娠・出産に対価を求める手法は受け入れ難い。

女流棋士の福間香奈さん

昨年12月に第1子を出産した福間女流六冠は、10日に開いた記者会見で「このままでは2人目の妊娠は諦めざるを得ない」と語った。連盟は陳謝したが、第一人者を苦悩させた責任を重く受け止めてほしい。

女流棋戦はこの15年余りで4つから倍の8冠となった。タイトル保持者と挑戦者による五番勝負や七番勝負など、移動と宿泊を伴う対局がほぼ毎月組まれている。福間女流六冠は妊娠中の昨年秋に挑戦した2つのタイトル戦で、体調不良による不戦敗が重なり敗退した。対局日程の延期を求めながら、他の棋戦への影響が大きいことなどから認められなかったという。会見での訴えには、女性への理解に乏しい連盟への不満も込められていよう。

連盟は速やかに規定を見直し、訴えから1週間も経たないうちに削除を発表した。今後は、対局の延期が望ましいのは言うまでもないが、対局者の変更がやむを得ない場合も、失冠あるいは挑戦権を失った棋士が収入面を含め不利な扱いを受けないよう配慮が要る。次年度に、より上位のシード権を与えるなど打開策はあるはずだ。

福間女流六冠は年明けに2度目の棋士編入試験を受ける。女性初のプロ棋士(四段以上)になれば、男性の棋士も対局相手として当事者になり得る。この機に、性差を超えて棋界全体で議論を深めてはどうか。タイトル戦の主催社や協賛企業の理解と支援も欠かせない。

将棋界は藤井聡太六冠らの活躍に沸き、女性の競技人口も増えている。女性の生き方を狭めない制度は、将棋界にも社会にもプラスになる。

2025年12月14日付産経新聞【主張】を、最新の情報に更新して掲載しています

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