臨時国会が閉幕した。政府の総合経済対策を裏付ける補正予算は成立した。高市早苗首相にとって就任後初の国会だったが、高い内閣支持率を保ちつつ、乗り切った。
Prime Minister Sanae Takaichi

臨時国会が会期末を迎え記者会見を行う高市早苗首相=12月17日午後、首相官邸(春名中撮影)

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臨時国会が閉幕した。政府の総合経済対策を裏付ける令和7年度補正予算は、与党の自民党、日本維新の会に加え、野党の国民民主党、公明党の賛同を得て成立した。

高市早苗首相にとって就任後初の国会だったが、高い内閣支持率を保ちつつ、乗り切った。

補正予算は物価高対策が柱だ。おこめ券を巡る自治体の混乱などを速やかに解消し、諸施策を効果的に実行しなければならない。強い経済の実現につなげられるかが問われる。

防衛費と関連予算の合計額については、当初予算と補正予算を合わせて4年度の国内総生産(GDP)比2%という目標を2年前倒しで達成した。厳しい安全保障環境の中、抑止力と対処力の向上に向け、防衛費の増額は欠かせない。

中国海軍の空母「遼寧」(共同)

高市首相は国会で、台湾有事で中国が米軍へ武力行使した場合、存立危機事態にあたる可能性に言及した。中国は反発し、日本への経済的威圧を重ねている。中国軍空母から発艦した戦闘機が、緊急発進(スクランブル)した航空自衛隊戦闘機にレーダー照射する挑発行為もあった。高市政権が冷静に対応したのは妥当である。

立憲民主党や共産党は首相発言を批判した。これは安保環境の現実を理解していないことを露呈するものだ。首相発言は政府の従来方針であり、問題はない。国民に安保情勢の厳しさを知らせ、対中抑止力を高める効果もあった。批判されるべきは異様な行動をとる中国だ。

与党と国民民主が発言撤回は不要としたのは当然だ。撤回すれば日米同盟は空洞化する。

中国軍機によるレーダー照射問題で記者会見する小泉防衛相=12月10日午前、防衛省

国会で小泉進次郎防衛相は、防衛費増額を批判する共産党に「言うべき相手を考えてほしい」と述べた。中国について、日本を上回る軍事費の増強をしていると語った。政府はこれからも防衛力の抜本強化の必要性を丁寧に説明してほしい。

このように国会で質疑があったとはいえ、防衛力整備や台湾有事については、もっと議論があってもよかった。また、与野党は、中国軍による危険なレーダー照射を非難する決議を採択すべきだった。

今国会ではガソリン税の暫定税率廃止法が成立した。一方、与党が提出した衆院議員の定数削減法案が審議入りすらできなかったのは残念である。

2025年12月18日付産経新聞【主張】を転載しています

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