中国の挑発的な強硬姿勢に、近隣国で高まる懸念。しかし、チベットには「吠える犬は決して噛みつけない」ということわざがあり、恐れることはない。
Chinese foreign ministry spokesman

中国外務省の林剣報道官=12月5日、北京(共同)

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中国が東アジア全域にわたって挑発的に100隻を超える艦艇を展開した前例のない海軍行動は、意図的な緊張激化を示すものであり、台湾、日本、そして地域全体に対する中国共産党のいっそう強硬な姿勢を反映している。この動きは通常の演習とは到底言えず、北京が自らの優位性を誇示し、周辺諸国の対応能力と限界を試そうとしていることを明確に示している。

2025年12月初旬、中国の海軍および海警局の艦艇数は一時100隻を超え、情報筋によれば、これは東アジアの現代史において最大規模の海上示威行動であるとされている。展開海域は、黄河から東シナ海、南シナ海、さらには西太平洋にまで及び、その目的は象徴的なものではなく、明確に戦略的である。

中国海軍の空母「遼寧」(共同)

これらの艦艇は模擬攻撃や接近阻止・領域拒否(A2/AD)作戦を実施した。これは紛争地域を孤立させ、外部からの増援を阻止するための戦術である。このような行動は防衛目的の範囲を大きく超えており、北京が潜在的な軍事衝突を想定したシナリオを演習していることを示唆している。

専門家の間では、このエスカレーションは二つの政治的出来事を受けたものだと指摘されている。一つは、日本の高市早苗首相が「中国が台湾を攻撃した場合、日本は軍事的に対応する可能性がある」と発言したこと。もう一つは、台湾の頼清徳総統が、防衛予算をさらに400億ドル増額することを発表したことである。

これに対する北京の反応は迅速かつ過剰であり、日本大使の呼び出しに加え、2024年12月の艦隊増派を上回る規模の艦隊を動員した。12月4日の時点でも、稼働中の艦艇数は90隻以上を維持しており、一時的な演習ではなく、継続的な圧力であることが明白となっている。

中国の覇権的姿勢は、台湾と日本に対する態度に最も顕著に表れており、南シナ海および東シナ海全体の不安定化を招いている。台湾は西太平洋において4つの中国海軍編成を確認したと報告しており、日本の自衛隊も警戒態勢を維持している。

尖閣諸島周辺の接続水域を航行する中国海警局の船

また、尖閣諸島周辺では、中国艦艇による巡回が増加している。地域の安全保障関係者によれば、2025年に中国艦艇が日本の領海に侵入した回数は30回を超え、2024年の18回から大幅に増加した。

一方、台湾では、中国軍機による防空識別圏(ADIZ)への侵入が2025年に1,700回以上確認されており、2024年の約1,500回から増加している。これらの数字は、中国の海空における強硬姿勢が、東アジアの脆弱な均衡をいかに揺るがしているかを如実に示している。

批判的な見方をする専門家たちは、中国共産党が意図的に資源を蓄積し、武力衝突に備えていると指摘する。報告によれば、北京は燃料、穀物、レアアースの調達を加速させており、戦争準備ではないかとの疑念を呼んでいる。

100隻を超える艦艇を連動させた海上作戦は、高度な艦隊統制能力を示しており、周辺諸国への対応時間を短縮させる効果を持つ。この水準の組織力は、軍事的即応態勢のみならず、「中国は米国とその同盟国が主導してきた安全保障体制に挑戦する意思がある」という政治的メッセージでもあるとも考えられる。

中国共産党の強硬姿勢は、海上行動にとどまらない。国内では反体制的な言論への統制を強化し、対外的な攻撃性を正当化する民族主義的言説を強めている。国際的には、経済的威圧を通じて影響力を拡大し、貿易依存を利用して批判を封じ込めている。

「一帯一路」構想は東南アジアにおける中国の存在感をさらに定着させ、ジブチやカンボジアの軍事拠点は中国の影響圏を拡張している。これらの動きは、軍事・経済・外交の手段を組み合わせ、中国が地域における影響力を強め、主導権を握ろうとする総合的な戦略を反映している。

地域諸国の対応は、現環境においては、直接声に出さないが警戒感と脅威を強く抱いたものである。台湾政府は国際的な協力体制の存在を国民に強調し、日本は直接的な対決を避けつつ、長期的な海軍力の近代化に重点を置いているようにみえる。米国は監視飛行や海軍パトロールを強化し、エスカレーションを避けつつ抑止力を示している。

しかし、この艦隊展開を「通常の演習」と見る向きと、「差し迫った危機」と警告する見方が分かれていること自体が、北京の真意を見極める難しさを物語っている。明らかなのは、中国の行動が大規模動員を常態化させ、信頼を損ない、誤算のリスクを高める危険な前例を作っているという点である。

尖閣諸島周辺でヘリコプターが飛び立った中国海警局の船=5月3日午後(海上保安庁提供)

中国の今回の海軍増派は単発の出来事ではなく、東アジアにおける支配的地位を確立しようとする計算された戦略の一環である。資源の備蓄、A2/AD作戦の演習、台湾と日本への継続的圧力を通じて、対峙への準備が整っていることを示している。この攻撃的姿勢は地域の安全保障を不安定化させ、国際規範に挑戦し、世界の海上貿易にとって重要な海域における紛争の影を濃くしている。

世界は、北京の行動が防衛的なものではなく、覇権的であり、力の均衡を自らに有利な形へと作り替えようとするものであることを認識しなければならない。

日本と台湾は、断固として備えを怠るべきではない。しかし恐れることはない。チベットには「吠える犬は決して噛みつけない」ということわざがある。

筆者:ペマ・ギャルポ(政治学者)

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