経済同友会の代表幹事に内定し、記者会見する日本IBMの山口明夫社長=12月16日午後、東京・丸の内
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経済同友会は新代表幹事に、副代表幹事を務める日本IBMの山口明夫社長を選任した。令和8年1月1日付で就任する。
代表幹事はサントリーホールディングス元会長の新浪剛史氏が務めていた。だが、サプリメント購入を巡って警察の家宅捜索を受け混乱を引き起こした責任を取り、9月30日付で辞任した後、2カ月以上にわたり空席となっていた。
主要経済団体のトップがこれだけ長期にわたり不在となるのは異常な事態だ。存在感の低下は否めない。山口氏は組織を立て直し、信頼回復を急がねばならない。
同友会は経済3団体の一つとして、幅広い問題について政策提言を行っている。経団連などと異なり、企業経営者が個人の資格で参加しているとはいえ、そのトップは公人であり、高い倫理観が求められるのは当然である。

新浪氏は購入したとされるサプリメントに大麻由来の成分が含まれ、違法の疑いがあるとして福岡県警の捜査を受けた。新浪氏は潔白を訴えたが、経済団体のトップが薬物事案に関する疑いが生じること自体、考えられないことだ。どれだけ有益な政策提言をしたところで、信頼を回復できなければ説得力は得られまい。
発信力の強化も求められる。同友会は出身企業にとらわれず、大胆な主張や政策提言を行ってきたが、高市早苗政権が10月に発足したにもかかわらず、目立った政策提言はない。
トップ不在で、組織が混乱していたことは確かだろう。だがそれは、ストレートな物言いで発信力に定評があった新浪氏に頼ってきたことを示しているともいえるのではないか。
発信力を取り戻すためにも、山口氏は組織の立て直しを急いでほしい。同友会は新浪氏の処遇を巡り辞任論と続投論に分かれて結論が出ず、新浪氏自身が辞任を申し出た経緯がある。後任選びにも時間がかかった。いずれも組織が分断されていることを物語る。このままでは同友会として政策提言をまとめるにも支障があろう。
同友会は、ただの経営者の親睦団体ではない。会員が自由闊達(かったつ)に意見を出し合い、価値ある政策提言を行うことこそ、存在意義である。会員はそのことを忘れてはならない。
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2025年12月22日付産経新聞【主張】を転載しています
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