兵庫県立こども病院でのデモンストレーションで、研修中のホスピタル・ファシリティドッグのミコと触れ合う子供(NPO法人「シャイン・オン・キッズ」提供)
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病院に犬が常勤し、難病と闘う子供たちや家族をサポートする「ホスピタル・ファシリティドッグ」の取り組みが各地で広がりつつある。課題となるのは費用面だが、令和9年までに取り組みをスタートさせる予定の兵庫県立こども病院は、昨年実施したクラウドファンディング(CF)で運用資金を確保。西日本の小児専門病院で初めての導入になる見通しで、担当医は「患者さん本人や家族がほっとする時間が少しでも増えてくれれば」と期待を寄せている。
子供たち「前向きに治療臨める」効果
同病院は昭和45年に国内で2カ所目の小児専門病院として開院。小児がんの拠点病院でもあり、長期にわたって入院し、難病と闘う子供たちと家族に、医師やスタッフらが寄り添ってきた。子供たちが前向きに治療に臨むとともに、心を癒やせるような取り組みとして、医師らから他県で導入事例のあったホスピタル・ファシリティドッグの案が出たという。

ホスピタル・ファシリティドッグは、「ハンドラー」と呼ばれる臨床経験のある医療従事者とペアで活動する。犬は幼少期からの訓練で病院という環境に慣れ、基本的には毎日病院に通勤。ハンドラーが医師らとカンファレンスで情報を共有し、患者への介入方法などを検討する。ベッドで添い寝をしたり、服薬時や点滴時にそばで応援したりするほか、手術室への移動、骨髄穿刺(せんし)などの処置の際の付き添いを行うことができる。
導入に当たってはハンドラーの研修費や犬の飼育代など、初期費用約1600万円が必要で、その後は年約1200万円がかかる。同病院は昨年5月、第1目標として2千万円を募るCFを実施。大きな目標額だったが、呼びかけからわずか11日間で達成し、最終的に約4500万円が集まった。現在は導入に向けてのマニュアルの整備や動線などの検討を進めている。

同病院の「犬部」の部長として導入の検討を進めてきた精神科の関口典子部長は「病院で大人に囲まれている子供にとって、犬は対等に関われたり、遊びの中で指示したりもできる存在になり、自己肯定感も高まる。楽しい思い出が病院の中にでき、前向きに治療にも臨めるのではないか」と期待する。
導入する病院が増加
ホスピタル・ファシリティドッグの育成や派遣を手掛けるNPO法人「シャイン・オン・キッズ」(東京)によると、国内では平成22年に静岡県立こども病院が初めて導入した。現在は、東京都や神奈川県などの病院4カ所で計4頭が活動。筑波大附属病院も導入に向けた取り組みを進めており、近畿ではCFを達成した兵庫県立こども病院のほか、大阪市立総合医療センターが導入のための寄付を募集している。
同法人が病院などと実施した共同研究で、ホスピタル・ファシリティドッグの活動の影響を尋ねたところ、回答のあった約270人のうち7割以上が「終末期の緩和ケアへの影響」と「患者の協力の得やすさ」をあげた。処置が痛くて「嫌だ」と訴えていた子供が「(犬と)一緒なら頑張れる」と気持ちを奮い立たせることもあったという。

同法人の村田夏子研究員は「手術など前向きになれない場面でそっと背中を押してくれる存在として評価された」と話す。
緩和ケアも…増える問い合わせ
「突然の入院で真っ暗な気持ちになってしまっていた中、ファシリティドッグと過ごす時間だけは僕にとって特別なキラキラした時間だった」。
同法人に寄せられた子供の声だ。緩和ケアにおいても、家族団欒(だんらん)の時間に寄り添う犬の存在が雰囲気を和らげたという声もあがる。
村田さんは「医療者はどう声掛けをしたら良いのかジレンマを抱えることもあるが、ファシリティドッグは言葉を話せないことが逆に強みになる」と指摘し、こう続けた。
「全国からの需要を感じており、円滑に提供できる体制づくりを進めたい。希望する病院にホスピタル・ファシリティドッグがいて当たり前になってほしい」
筆者:地主明世(産経新聞)
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