フラットンに乗り込む利用客=1月16日、高知市のJR高知駅
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全国で初めてフルフラットシートを採用した夜行高速バスの定期運行が高知駅-東京間で昨年12月から始まった。窮屈で疲れる、眠れないといった夜行高速バスの常識を覆すもので、利用客には「着座型よりも疲労度が軽い」などと好評で、平均乗車率は全国の夜間高速バスの6~7割を上回り、8割を超える人気ぶりだ。運行する高知駅前観光(高知市)の担当者は「一度乗れば良さを実感してもらえるはず。着座シートには戻れない」と自信をのぞかせる。
快適さに熟睡も
同社は昨年12月から高知駅-東京・八重洲間で週1往復、フルフラット席ユニット(ソメイユ・プロフォン)を採用した夜行高速バス「FLATON(フラットン)」を運行。1月からは改良型車両を加えた2台で週3往復に増便、4月をめどに改良型車両2台による週4往復(木~日曜出発)を目指している。

昨年3~8月に週1便で試験運行を実施。同社によると、モニター調査では「乗り心地が快適」「従来の夜行バスに比べ疲れにくかった」との回答がいずれも7割以上に上り好評だったという。
車内には上下2段のフルフラット席が横3列縦4列の計24席配置され、席のサイズは縦約180センチ、横約48センチ、各席の天井までの高さは約50~70センチで、上半身部分はカーテンなどで囲われている。長身、大柄な男性は窮屈さを感じるかもしれないが、乗り心地の良さを感じる利用客は多い。
「意外と眠れて、到着まであっという間に感じた」と話すのは、出張で利用した都内の男性会社員(48)。帰省で乗車した神奈川県の30代の主婦は「今まで乗った夜行高速バスよりも楽だった」と感想を述べた。
ソメイユ・プロフォン統括責任者の本多敦史さんは「初めて乗車すると5~10分は寝転んだ状態でのバス移動に違和感を覚えるかもしれないが、30分もすれば慣れる。試験運行に乗車した約千人のうち『合わない』と言われた人は高齢の数人だけだった」と説明する。
実際に10往復以上乗ったという本多さんは乗り心地について「疲労度は間違いなく軽く、到着後に腰や下半身の痛みや重さはほぼ感じない。着座シートには戻れない」と話す。到着後に乗務員が1分近く声がけをしてやっと目を覚ますほど熟睡する乗客もいるという。

本多さんによると、フラットンの利用客は中年男性が多い印象の従来型と比べ、女性や高齢者が多いのが特徴だ。「カーテンなどでプライベート空間が確保でき、高齢者には疲労感が軽くなるとの期待があるようだ」と本多さん。一方で「ネット上での感想を見て、体格のいい男性らから『狭そう』というイメージを持たれ、敬遠されているようだ」と推測する。
ライバルは航空機
高知-東京間の移動は航空便か夜行高速バスのほぼ2択だ。航空料金と宿泊費用を節約したい人は夜行高速バスが選択肢となる。フラットンの運賃は予約状況に応じた変動制で下段席が基準1万5千円、上段席が基準1万7千円。利用客からは「飛行機と比べて費用が抑えられるので懐が助かる」との声もあがる。また発着時間が午後7~9時台のため、航空機利用より遅い時間まで滞在できるのもメリットだ。
航空機や新幹線に比べてバス移動は大変という印象になりがちだが、同社の担当者は「定期運行が始まって2カ月足らずだが、乗車率・予約状況は曜日によっては8割前後の便もあり、全体的にいい出足だ」と説明。本多さんも「一度フラットンに乗れば良さを実感してもらえる。認知度を高め、快適さを浸透させ、もっと乗車率を上げていきたい」と力を込める。
同社は他社へのフルフラット席の設備の販売を計画中で、要望に応じて横2列全16席にして席や通路の幅を広げたり、個室感を高めたり、ハイブリッド型として前方を通常座席、後方をフルフラット席にしたりと柔軟に対応していくという。
自社運行を軌道に乗せた上で、貸し切りバスや部活動の遠征・合宿、登山の送迎などのツアーバス、インバウンド(訪日観光客)をターゲットにしたチャーター便などにも活用していく方針だ。
本多さんは「高知は南海トラフ巨大地震の被害が想定されており、大規模災害時にはフラットンのトランクに救援物資を積んで避難所に行き、被災者やボランティアらの寝床としても貢献できるのでは」と話している。
筆者:和田基宏(産経新聞)
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