裁判所に入る黎智英氏を乗せたとみられる車両=2月9日、香港(共同)
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香港の著名な民主活動家、黎智英(ジミー・ライ)氏(78)が香港国家安全維持法(国安法)違反などの罪で禁錮20年の量刑を言い渡された。
高齢で健康状態が悪化している黎氏にとっては、国安法の最高刑である終身刑に等しい厳刑だ。中国の意向に沿った政治的な判決で断じて容認できない。即時釈放を求める。

中国の習近平政権が香港の民主化運動を弾圧するため、2020年6月に国安法を導入してから香港は大きく変容した。
黎氏が創業した香港紙、蘋果(ひんか)日報(アップルデイリー)は編集幹部らが国安法違反の容疑で一斉に逮捕される中、21年6月に発行停止に追い込まれ、言論・報道の自由が剝奪された。
選挙制度も改悪された結果、議会は親中派で独占された。香港最大の民主派政党だった民主党は25年12月、中国側の圧力を前に解党を余儀なくされ、香港民主化運動は名実ともに幕を下ろした。
その民主化運動を言論・経済面で支援し牽引(けんいん)してきたのが黎氏だ。習政権は弾圧の総仕上げとして、香港の司法が下した禁錮20年の厳刑に満足していることだろう。しかし、判決の影響を過小評価すべきではない。

黎氏は収監前に行った産経新聞のインタビューで、自身の裁判を通じて「香港の司法の現状がよく分かるはずだ。それは香港から外国企業が逃げ出すか否かの指標になる」と指摘していたが、その通りの結果となった。行政、立法のみならず、司法も「中国化」してしまった香港の現状が露呈した今、香港に進出する外国企業は投資を再検討すべきときではないか。

そもそも、言論や集会の自由など基本的人権を侵害する国安法に基づく逮捕や裁判自体、認められるものではない。国際社会から黎氏への判決に厳しい批判の声が上がるのは当然だ。
ルビオ米国務長官は「香港で基本的自由を唱える人々を黙らせるために、中国政府は手段を選ばないことを示した」と非難し、黎氏の「人道的釈放」を認めるよう中国に強く求めた。
民主活動家でノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏は服役中にがんを患い、米国などが受け入れを表明したが、中国側に拒否され17年に病院で死亡している。劉氏の悲劇を二度と繰り返してはならない。
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2026年2月12日付産経新聞【主張】を転載しています
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