親日国であるタイの最高峰の大学として知られるチュラロンコン大学学長は「ウェルビーイングの中心は人。身体だけではなく、メンタル、経済、包括的なものだ」と定義した。
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インタビューに応じるチュラロンコン大学のウィラート・プリワット学長(杉浦美香撮影)

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ウェルビーイングを掲げるタイ。その国の最高峰の大学として知られるチュラロンコン大学のウィラート・プリワット学長は、バンコク中心地にある大学内でJAPAN Forwardの単独インタビューに応じ、「ウェルビーイングの主役は人であり、身体だけではなくメンタルや経済的安定を含む包括的なものだ」と定義し、重要性を訴えた。

命をつなぎ、よりよく生きる

2025年に開かれた大阪・関西万博におけるタイパビリオンは、「大きな幸福のため、いのちをつなぐタイ」として、医療と文化を融合、心身の健康、ウェルネスをテーマにしていた。

ウィラード学長は「ウェルビーイングとは、一国の状況だけを指すのではなく、一人ひとりの国民全てがよりよく生きること、またどのようにすればよりよく生きるかということを意味する」と話す。具体的には、「メンタルヘルス、身体的健康、経済的な安定といった包括的なものだ」と指摘した。

「知識」を「知恵」に市民に還元

チュラロンコン大学はSDGsのインパクトランキング(英高等教育専門誌Times Higher Education)で、タイ国内の大学で1位(世界44位)にある。特に、ウェルビーイングを含むSDGs目標3への取り組みが高く評価されている。

学長は「当大学はトップレベルの学術機関としてだけではなく、若者をケアし、世界に通用する市民へと育てる場所だ」と大学の役割に言及、学問的なカリキュラムだけではなく、課外活動などの多様な体験を通じた人間的成長を促しているという。

構内に飾られた大学を訪問した各国の要人の写真。2006年当時の天皇陛下ご夫妻の写真もあった(杉浦美香撮影)

大学で培われている「知識」を「知恵」とし、学生だけではなく短期、長期にわたる社会人、市民講座を設置、市民に還元している。今年から新たに、市民の生涯学習を推進するカレッジをスタートさせた。

「食」は世界言語

ウェルビーイングに大きく貢献するのが「食」だ。その「食」において、タイの伝統的なスープであるトムヤムクンが2024年、国連ユネスコの無形文化遺産に選ばれた。

ユネスコの世界無形文化遺産に登録されたトムヤムクン(杉浦美香撮影)

「『食』は単なる栄養ではない。良い食べ物は、人を幸せにし、ウェルビーイングにつながる」と学長。

トムヤムクンはタイ人だけの食べ物ではなく、世界中の人が楽しめる、日本の寿司のような料理だという。

「食に翻訳はいらない。言語は違っても、食でコミュニケーションすることができる」と語った。

そのうえで「五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を包括的にカバーすると、食はよりおいしくなくなり、より良いウェルビーイングを生み出す」とした。

AIは「人間の創造物」

日本はじめ世界中の大学が人工知能(AI)の研究を進めている。

AIについて、学長は「人工知能とは何を意味するのか。人工とは、本物ではないということだ」と強調する。そのうえで、「AIはあくまで人が作り出したものであり、AIに使われてはならない」と話す。

チュラロンコン大学はAIの利用者ではなく創造者であることを目指しており、学生にもそれを教えているという。

大学間協定を結んでいる東北大学の坂井信之教授から記念品を受け取り、満面の笑みのウィラート学長(杉浦美香撮影)

日本とタイの若者へのメッセージ

日本とタイは600年以上の交流を行っており、来年は両国の修好140周年を迎える。
最後に、同学長は両国の若者に向けて、学長は「若いということは世界が前にあるということだ。今日を精一杯生き、そして未来に備えてほしい。自分の人生のリーダーになってほしい」とメッセージを贈った。

筆者:杉浦美香(Japan 2 Earth編集長)

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