新型コロナウイルスの感染拡大に、歯止めがかけられない状況が続いている。
東京都では7月30日、過去最多を更新する367人の感染が新たに確認された。29日には全国の1日当たりの新規感染者数が初めて千人を超え、感染者ゼロが続いていた岩手県でも2人の感染が確認された。
大都市圏から地方への波及が顕著になり、若年層から高齢層を含む全年代への感染の広がりが、同時進行している。
政府は「重症者が少なく、医療態勢が逼迫(ひっぱく)する状況にはない」との認識を変えていない。感染者が増えたのは積極的な検査の結果であり、緊急事態宣言を発令した4月の状況とは異なる、という認識は間違いではない。
しかし、高齢者層への感染拡大が続けば、重症者の増加に直結する。地方への波及は医療態勢を一気に逼迫させる恐れがある。
東京都の小池百合子知事は「感染拡大 特別警報」と現状を位置付けた。国と全国の自治体も危機意識を共有し、加速する感染拡大にブレーキをかける手立てを講じる必要がある。
小池都知事は、酒類を提供する飲食店などを対象に営業時間の短縮を要請する考えを示した。ただし、緊急事態宣言下のように経済・社会活動の多くを停止させるわけにはいかない。
東京都が最優先に取り組むべきは、急増する感染者を適切にサポートし、感染が広がらない態勢を構築することである。そのためには、軽症や無症状の感染者の「宿泊施設での療養」という原則を徹底することが不可欠である。
東京都の感染者状況(29日現在)によると、自宅療養の感染者が479人、宿泊療養は218人となっている。一方で、感染経路が判明した人の中では家庭での感染が、いわゆる「夜の街」関連を上回っている。
クルーズ船や医療機関の集団感染の事例を考えれば、一般の家庭での感染防護は不可能である。容体が急激に悪化する場合もある軽症者らの命を守るためにも、家庭から市中への感染拡大を防ぐためにも、自宅療養をやめホテルなどの宿泊施設を活用すべきだ。
東京、大阪など大都市圏に限らず、今後は地方でも宿泊療養施設の確保が重要になる。政府にも積極的な支援を望む。
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2020年7月31日付産経新聞【主張】を転載しています