やはりと言うほかない厳しい数字である。今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値が年率換算で27.8%減に落ち込んだ。戦後最悪のマイナス成長である。
新型コロナウイルス禍に伴う4~5月の緊急事態宣言で、経済社会活動を人為的に止めたことによる帰結である。内需の柱である個人消費が前期比8.2%の激減だったことが日本の苦境を端的に表している。
さらに切迫しているのが足元の経済だ。4~5月を底とすればその後の景気は幾分持ち直した。だが、十分な回復をみないうちに感染者が再び増えてきたからだ。
お盆の帰省を含めて自粛の動きが強まっている。事態収束がますます見通せなくなり、企業心理も冷え込んだままだ。このままではぎりぎりの経営を強いられてきた中小企業や個人事業者が持ちこたえられなくなる。
政府は今こそ、経済の下支えに全力を挙げるべきだ。従来の施策で足りるかどうかを検証し、危機感を持って感染第2波の深刻化に対応しなくてはならない。
4~6月期は、消費に加えて輸出や企業の設備投資も軒並み減少した。政府は令和2年度の実質成長率をマイナス4.5%と試算しているが、海外で今秋、大規模な第2波があればマイナス5.0%まで落ち込むとみている。
指摘したいのは、政府が2度の補正予算で実施したコロナ対策は4~5月の最悪期に策定したものだということだ。5月下旬に緊急事態宣言を全面解除した後は、もっぱら感染拡大の防止と経済活動の両立を目指してきた。
だが秋を待たず、国内外で感染が再拡大している現状を踏まえれば、早急に対策を立て直すべきだろう。経営不安が広がり、雇用悪化に歯止めがかからなくなる事態を招けば、日本経済は底を抜けるように悪化の一途をたどる。
政府は先に予備費の中から1兆円超を使い、事業者への持続化給付金などを追加支出することを決めた。現状を踏まえて機動的に支援を拡充すべきは当然である。
政府支援には、それが迅速に届かないことへの批判もあった。一方、観光や運輸、飲食店など厳しい経営が続く業界もあれば、巣ごもり需要を追い風に業績を伸ばす企業もある。大切なのは、苦境にある業界に対し、迅速かつ十分な支援を実施することである。
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2020年8月18日付産経新聞【主張】を転載しています