Tokyo Olympics Suga and IOC chief Bach

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東京五輪の開催をめぐって、これまで積極的な発言を控えていた経済界からも、賛否の声があがり始めている。世界に自社製品や技術力を発信する最高の舞台だけに、スポンサー企業からは開催に前向きな発言が目立つ。しかし、新型コロナウイルスの感染収束が見通せない中、経済効果の観点からも、開催はデメリットが大きいという見方も出始めている。

 

五輪開催の是非について、これまで企業側が積極的に発言することは少なかった。国民の間でも意見が分かれており、どちらの意見を表明しても、一定の反発やブランド棄損のリスクがあるからだ。

 

こうした中、口火を切ったのが楽天グループの三木谷浩史会長兼社長だった。2月にツイッターへ「本当に今年開催すべきなのかという議論もすべきだ」と投稿。5月14日放送の米CNNテレビのインタビューでは五輪開催を「自殺行為のようだ」と強い表現で反対した。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も23日にツイッターで「失われる命や、緊急事態宣言した場合の補助金、GDPの下落、国民の我慢を考えるともっと大きな物を失うと思う」と投稿した。

 

経済効果の観点でも開催には疑問符が付き始めている。野村総合研究所の木内登英(たかひで)エグゼクティブ・エコノミストは、五輪を中止した場合の経済損失を1兆8108億円と試算。その上で昨年4月と今年1月に行った緊急事態宣言ではそれぞれ6兆円を超える経済損失が生じたとして、五輪開催に伴い再び緊急事態宣言が発令されれば、経済損失は五輪を中止した場合よりも大きいとの分析結果を公表した。

 

困惑するのはスポンサー企業だ。「五輪でブランド戦略に成功すれば、今後数年間にわたり売り上げの底上げが見込める」(食品メーカー)ため、これまでも多額の資金を投じ、準備を進めてきた。実際、スポンサー企業のトップからは「何年か後に訪日客が戻ってくるときの大きなきっかけになる」(JR東日本の深沢祐二社長)など、開催に前向きな声が目立つ。

 

もっとも子供の夢を育むなど、五輪の効果は経済だけではない。IT企業にはこの1年間、テクノロジーを駆使してイベント開催にこぎつけるなど、コロナに立ち向かってきたという自負もある。NTTの澤田純社長も「いたずらにやめるべきであるか、ないかではなく、やるためにどのようなことが必要か、そういう議論を望んでいる」と話している。

 

 

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