Yuzu Cosmetics from Kyoto

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プラスチック製品による海洋汚染が世界的な課題となり、プラスチックごみ削減に向けた、官民あげた取り組みが進む。プラスチック容器を製造するメーカーの間でも、高品質で環境に配慮した商品の開発競争が激しくなっている。供給先である化粧品メーカーなども、積極的にリサイクル製品を扱うケースが増えているからだ。現場では、技術革新のための試行錯誤が続いている。

 

 

ニーズ高まるリサイクルプラスチック

 

創業64年になるプラスチック容器の老舗企業、奈良市の第一化工の工場では、機械が所狭しと並び、さまざまな大きさや形の容器を作り出していた。ほこりひとつない空間で、従業員が出来上がった容器を黙々と点検している。

 

同社は毎月約200トンの原料を使い、飲料や調味料、化粧品といった私たちが日常的に手にしている容器を製造している。

 

「2年ほど前から、業界ではリサイクルした原料や、植物由来の特殊なバイオマス素材を使った容器のニーズが高まっている」と専務取締役の小西淳文さんは話す。

 

ただ、リサイクルやバイオマス素材を使った容器の開発は、品質やコストがかかるといった問題に加え、技術的な難しさがある。プラスチック容器に求められるのは、内容物に影響を与えず保存できる品質と、美しい外観だ。これまでは「リサイクル品だと、容器が黄色みがかるなどの問題があり、特に化粧品容器に使われることは基本的になかった」と指摘する。

 

実際、一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、令和元年の廃プラスチック排出量850万トンのうち、国内で再利用されたのはわずか100万トン程度と推定される。その多くは、土木建築資材や荷物を載せるパレットといったもので保存容器ほどの精度は求められない製品が多くを占めている。

 

 

2カ月かけて開発

 

しかし、これまでは容器の透明度などにこだわってきた化粧品業界も、環境への配慮にかじを切りつつある。こうした流れを受け、第一化工もリサイクル容器の製造への挑戦を決めた。

 

その道は容易ではなかった。リサイクル原料を使う場合、同社が得意な「ブロー成形」と呼ばれるプラスチック加工技術に大きな影響がでるからだ。

 

この技術では180度前後に加熱された原料を、スクリューの圧力で筒状に押し出し、容器の形状に膨らませる。ところが、リサイクル原料はさまざまな不純物を含むことから、温度や圧力の最適値が不安定になり、成形の難易度が通常よりはるかに高くなる。同社が挑戦した化粧水容器の開発では、成形の温度や圧力を下げる微調整を2カ月かけて繰り返し、ようやく完成にこぎつけた。

 

 

新素材の容器の開発も

 

最近では、でんぷんを使った容器も試作。成功すれば「燃えるごみ」として捨てられるプラスチック容器になるはずだったが、成形時の高温に耐えられずあえなく失敗。しかし、小西さんは焦げてもろくなった容器を手に「簡単につぶせる捨てやすい容器が作れるかも」と笑顔を見せ、めげずに改良を重ねる意欲を燃やす。

 

2年前まで、同社では新たな素材を使った商品の開発は年に1回程度だったが、今では5つの開発が進行中だ。石灰石の粉や、燃焼時の二酸化炭素排出量が少ない「グリーンナノ」という新素材を使った容器も完成に向けて着々と試作を重ねている。

 

昨年10月には、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を経営方針に掲げ、環境配慮型の容器製造をさらに進めることにした。現在、リサイクルやバイオマスプラスチック容器の売り上げは全体の1%程度。しかし、10年前まで4製品のみの取り扱いだったのが、昨年度だけで20製品以上増えており、このまま3%を達成し、その後も拡大を目指したい考えだ。

 

業界もこうした動きに期待する。プラスチック循環利用協会の担当者は「日本のリサイクルは活用の幅がせまいのが現状。各社の技術開発が進み、いろんな製品を生み出してほしい」と期待している。

 

筆者:桑島浩任(産経新聞)

 

 

資生堂やロート製薬、リサイクル進む

 

国内化粧品業界での、プラスチックごみ削減の取り組みは急速に広まっている。

 

中でもアジアを代表する化粧品メーカーの資生堂は積極的だ。平成27年以降、ボトルにリサイクル原料を使用。このほか、リサイクルしやすい単一素材の活用や、自社製品の容器を回収して再利用することで、プラごみの削減を目指す。

 

同社広報は「令和7年までにプラスチック製の容器包装を100%サステナブル(持続可能)製品にすることを目標として定めています。実現へ向けて環境に配慮したさまざまな製品を作っている」と強調する。

 

一方、10年以上前から、国内でいち早く詰め替え用化粧品の販売を始めたロート製薬でも、人気の化粧品ブランド「肌ラボ」で、植物由来の原料を一部に用いたバイオマス容器を使用するなどしている。

 

昨年はマツモトキヨシホールディングスと共同で、使い終わった化粧品の空き容器を回収し、リサイクル原料に活用、最終的には植木鉢に加工して「地球の緑を増やそう」というプログラムも始めた。同社では「今後も地球環境も考え、商品を展開していく」としている。

 

 

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