新市場区分での取引が開始された
=4日午前、東京・日本橋兜町の東京証券取引所(酒巻俊介撮影)
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東京証券取引所の株式市場が再編され、新たに設けられた3市場の取引が4日から始まった。
上場基準を厳格化するなど投資家にとって分かりやすい市場に再編することで、国内外の投資を呼び込むことが狙いである。海外市場との競争激化で地盤沈下が著しい東証にとって、市場活性化に向けた重要な布石となろう。
ただし今回は、最上位市場の企業を十分に絞り込めなかった点などの課題も残った。東証に不断の改革が求められるのは当然だ。併せて上場企業にも、競争力を強化し、着実な成長で企業価値を高める経営を追求してもらいたい。
東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックを廃止し、新たにグローバル企業向けで最上位の「プライム」、中堅企業向けの「スタンダード」、新興企業向けの「グロース」へと再編した。
従来は大小さまざまな企業が東証1部に集中するなど、市場間の違いが分かりにくかった。このためプライムでは市場で流通する株式の比率を35%以上にし、時価総額を100億円以上とするなど上場基準を厳しくした。社外取締役比率を高めるなどガバナンス(企業統治)強化も求められる。
中にはプライムの上場基準を満たしていても、あえてスタンダードを選んだ企業もある。英文での情報開示などプライムの上場維持に必要な労力を使うよりは本業に経営資源を集中させるためだ。企業にとって重要なことは、上場した市場の特色を生かして自らの経営を向上させることである。
問題は経過措置だ。プライムの基準を満たしていなくても、適合に向けた計画書を出せば東証1部からプライムへと移行できる。しかも経過措置の期限は決まっていない。基準未達企業はプライム全体の16%にのぼり、プライムの顔ぶれが東証1部と大きく変わらなかった要因となった。
東証は早急に経過措置の終了時期を示すべきだ。時価総額基準のさらなる引き上げも検討し、最上位市場の位置づけをもっと明確にしてほしい。それが投資家にとっての分かりやすさにつながる。
SMBC日興証券幹部らの金融商品取引法違反(相場操縦)事件のほか、上場企業の不祥事も相次いでいる。投資家の不信を払拭するためにも、東証と上場企業の双方が改革姿勢を貫き、投資の魅力を高められるかが問われよう。
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2022年4月6日付産経新聞【主張】を転載しています
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