東京・神楽坂の住宅街にと店をかまえる、108年の歴史を持つ「佐々木活字店」。60年以上前に製造された自動活字鋳造機もいまだに現役で稼働している。
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活字を棚から拾う佐々木勝之社長。鉛、すず、アンチモンからなる合金を約350度で溶解し鋳型に流し込むことで活字は出来上がる =東京都新宿区(関勝行撮影)

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印刷所や出版社が軒を連ねてきた東京・神楽坂の住宅街。108年の歴史を持つ「佐々木活字店」がひっそりと店をかまえている。店に入るとカウンターには印刷見本が並び、年季の入った木棚には活字がぎっしりと詰まっていた。

左右の棚には、販売用の多種多様な活字が大量に収められている。奥の作業部屋では、印刷機を調整する先代の精一さんの姿が見られた =東京都新宿区(関勝行撮影)

活字とは活版印刷で使用する字型のこと。鉛合金から活字を作る「鋳造」▽活字の並んだ棚から文字を選ぶ「文選」▽活字を並べて組み版を作る「植字」▽活版を刷る「印刷」-。この4つの工程から活版印刷は成り立っている。現在この工程すべてを網羅できるのは、国内で佐々木活字店だけになった。

60年以上前に製造された6台の自動活字鋳造機もいまだに現役で稼働している。自動鋳造機から出てきた活字を確認する佐々木勝之社長 =東京都新宿区(関勝行撮影)

店には日本語の明朝やゴシックなどの各書体のほか、アルファベット、記号などの活字が約10種、合計700万本以上が保管されている。60年以上前に製造された6台の自動活字鋳造機もいまだに現役で稼働している。

創業は大正6年。ピーク時には約20人の職人が働き、鋳造販売が専門だったが、印刷までを手がけるようになった。

4代目社長の佐々木勝之さん(50)は「活字文化をなくしたくない、店を残したい」との思いから36歳の時に建築関係の仕事を辞め、父の精一さん(83)から家業を継いだ。

「佐々木活字店」の2階では、60年以上前に製造された6台の自動活字鋳造機もいまだに現役で稼働している =東京都新宿区(関勝行撮影)

「活版印刷は、どんな小さい字でもシャープさがある、インクの風合いもデジタルのプリントでは出せない」

こう魅力を語る勝之さん。一文字ずつ活字を鋳造し、拾うという活版印刷の技術を精一さんから日々学んでいる。

デジタル化が進み、文字は画面で見たり、プリンターで印字したりすることが増えた。活字離れが進むなか、職人たちが組み上げる活字に体温を感じた。

濃紺のタイル張りで、レトロな外観の店舗 =東京都新宿区(関勝行撮影)

筆者:関勝行(産経新聞写真報道局)

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