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インバウンド(訪日外国人客)が日本経済を支える構図が鮮明になっている。
観光庁によると、令和6年のインバウンドによる消費額は前年から5割以上増え、統計開始以来初めて8兆円を超えた。政府観光局によると、昨年の訪日客数も推計約3687万人と年間で過去最多となった。
訪日客の消費は統計上、輸出にカウントされる。すでに電子部品や鉄鋼を上回り、自動車に次ぐ第2の「輸出産業」にまで規模を拡大した。
政府は12年に訪日客6000万人、消費額15兆円を目指す目標を掲げている。目立った成長産業が見当たらない中で、日本経済を活性化するためにも一層の拡大を目指したい。
そのためには解決すべき大きな課題がある。観光客の集中による過度な混雑や、マナー違反といったオーバーツーリズム(観光公害)である。
すでに東京や京都、富士山などの混雑ぶりは海外でも報じられるようになっている。訪日客の満足度が下がれば、目標の達成は見込めまい。オーバーツーリズム対策に決め手はないとされるが、それぞれの観光地で可能なことから実施に移していく必要がある。
訪日客の宿泊先は7割超が三大都市圏に集中している。オーバーツーリズムを軽減しながら、訪日客消費を経済成長につなげる施策として期待されているのが地方への誘客だ。
日本には食文化や歴史遺産など、その土地ならではの観光資源を持つ地方都市が数多く存在する。自然や文化を体験するアドベンチャーツーリズムの人気も高まっており、長期滞在が期待できる。地方の魅力を効果的に発信するプロモーション活動をさらに進めてほしい。
地方の受け入れ体制の整備も欠かせない。海外から地方空港への就航促進に加え、宿泊施設の拡充が求められる。人手不足が深刻化する中で、受け入れ体制を整備するにはIT技術やロボットの活用も必要になろう。政府や自治体による導入支援策の拡充も検討すべきだ。
オーバーツーリズムで地元住民の日常生活に支障が出ている地域もある。住民生活を犠牲にした観光立国はあり得ない。関係者はそのことも念頭に、観光産業の持続的な発展に向け知恵を絞ってもらいたい。
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2025年1月31日付産経新聞【主張】を転載しています
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