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日本を取り巻く「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」(令和6年版外交青書)がさらに悪化しつつある中、政府は米大統領選で勝利宣言したトランプ前大統領との間でも、日米の強固な関係を内外に誇示し、日米同盟の抑止力を高めたい考えだ。
高い関心を持って注視
「米大統領選挙はその推移、影響も含め、高い関心を持って注視をしている」
林芳正官房長官は11月6日の記者会見で、こう述べた上で、次期米政権に関し「日米同盟のさらなる強化に向け、強固な信頼、協力関係を構築していきたい」と語った。
日米同盟が日本の外交・安全保障政策の基軸となることは不変であり、日本政府は、トランプ氏とハリス副大統領のいずれが次期大統領になる場合でも、円滑に関係を構築できるよう準備を進めてきた。
ハリス氏が当選した場合はバイデン政権のスタッフが「かなり残る」(外務省幹部)との見方もあったが、外務省は在米日本大使館を中心に、トランプ前政権で閣僚や米国家安全保障会議(NSC)の幹部を務めた人物ら、トランプ氏につながる人脈とも水面下で接触を重ねてきた。
外務省幹部は「国家安全保障戦略が示した『日米同盟の抑止力と対処力を一層強化する』との方針に変わりはない。それを基礎に新しい政権と関係を築いていく」と語る。
東シナ海や台湾周辺での中国の軍事活動の活発化に加え、北朝鮮のロシアへの派兵によってウクライナ情勢と日本周辺の安全保障環境がリンクする中、米国のインド太平洋地域への関与の重要性はさらに増している。
多国間枠組みに不透明感
バイデン政権は、この地域の安全保障を巡り、日米豪印の協力枠組み「クアッド」や日米韓3カ国の協力関係を重視してきた。バイデン氏の外交路線を継承するとみられていたハリス氏と異なり、貿易などで首脳間のディール(交渉)を好むトランプ氏の下で、日米を含む多国間の枠組みに不確定要素は増えるとみられる。
ただ、別の外務省幹部は「インド太平洋地域に関与することが米国にとっての最重要事項であることには超党派でコンセンサスがある」と指摘。トランプ氏への対応について「コンセンサスを味方につけながら、米国の関与が重要だと言い続けていく」と話した。
筆者:原川貴郎(産経新聞)
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