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鬱病などの精神疾患を、人工知能(AI)で脳の画像から客観的に見分ける医療機器が国の薬事承認を取得し、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)などの研究チームが6月30日、発表した。正確な診断や最適な治療への貢献が期待される。
研究チームは開発に当たり、鬱病患者と健常者の計約700人について安静状態での脳活動を撮影。このデータを用い、患者特有の脳活動にみられる傾向を客観的に数値化するAIを実現した。約70%の精度で鬱病と判別できるという。
診断では、日本で広く普及している磁気共鳴画像装置(MRI)を使用。MRIで10分間ほど脳活動を撮影し、その画像をAIが解析した結果を医師が診断に用いる。
従来、鬱病は主に患者本人の訴えを医師が聞き取って診断するが、専門医以外を受診する事例も多く、正しい診断に至らない課題があった。

開発した医療機器は、安全性などを満たせば臨床での利用を認め、さらに十分な効果を確認する2段階承認の制度を活用。今回は第1段階の承認で、来年春にも第2段階の承認取得への申請を行い、令和9年に公的医療保険の適用を目指す。
一方、鬱病には効果的な治療法が異なるタイプがあり、これを脳画像から見分ける技術も開発。3年後の実用化を視野に入れる。ATRの酒井雄希主幹研究員は「働き盛りの患者も多い。医療経済という面でも貢献できる」と話した。
鬱病に限らず、統合失調症や自閉スペクトラム症などを数値化する技術も開発中で、一度の撮影で複数の精神疾患や障害を解析できるAIの構築も目指すとしている。
(産経新聞)
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