
記者会見するJERAの可児行夫会長(左)と奥田久栄社長=東京都内
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日本最大の火力発電会社JERAが、米アラスカ州で産出される液化天然ガス(LNG)の調達を検討している。
開発を主導する米エネルギー企業との間で、LNG購入に関心があることを表明する意向書を交わした。法的拘束力はなく、将来の購入を約束するものではないが、実際に価格や調達量を交渉する前段階となる。
アラスカ産LNGは日本まで10日弱で輸送できる。中東産と異なり他国への転売も自由なため、余剰LNGを抱えるリスクもない。有事の際も輸入可能だ。現在10%ほどである米国からのLNG調達量を増やすことは、日本のエネルギー安全保障や日米関係の強化に資する。

問題は6兆円を超えるとされる事業費の高さだ。事業費がLNG価格に転嫁されれば、割高なLNGの購入を迫られかねない。JERAも米社から得られる開発状況などの詳細な情報を基に経済性などを判断し、最終決定するとしている。
日米両政府は関税交渉の合意を受けた共同声明に「アラスカ産LNGの新たな購入契約を追求する」と明記した。JERAの対応はこの合意に沿ったものだ。価格を抑え、日本にも利益となるプロジェクトとするには政府の関与が必要だ。
アラスカ産LNGの開発計画では、同州北部のガス田から約1300キロに及ぶパイプラインを敷設し、南部に新設する液化プラントまで天然ガスを輸送するという。
政府はエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)などを通じた開発支援のほか、すでにアラスカ産LNGの調達方針を表明している台湾やタイをはじめ、アジアのLNG輸入国・地域と連携し、投資負担を分担することも検討すべきだ。
LNGは都市ガスの原料となるのはもちろん、火力発電の燃料としても使われる。日本の電源構成のうちLNG火力は30%を超える。
化石燃料では燃焼時の二酸化炭素排出量が少ないLNGは、今後も世界的な需要拡大が予測されている。安定調達先を増やしておくことはエネルギー安保上も重要だ。
アラスカ産LNGを日本にとって有効な資源とするために、政府には効果的な支援を進めてもらいたい。
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2025年9月21日付産経新聞【主張】を転載しています
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