トランプ米大統領とプーチン露大統領が米アラスカ州で会談したが、ロシアとウクライナの停戦への道筋を示すことはなかった。トランプ氏のプーチン氏への宥和的姿勢が懸念される。
Trump Putin in Alaska

米アラスカ州アンカレジの米軍基地で話すトランプ大統領(右)とロシアのプーチン大統領(AP=共同)

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トランプ米大統領とプーチン露大統領が米アラスカ州で会談したが、ロシアとウクライナの停戦への道筋を示すことはなかった。

プーチン氏は会談後の共同記者会見で、停戦には「紛争の根本原因の除去」が必要との強硬姿勢を崩さなかった。トランプ氏は停戦合意には「至らなかった」と語った。

ロシアのウクライナ侵略はまもなく3年半になる。一度の会談で、しかも当事国のウクライナのゼレンスキー大統領不在のまま、一気に停戦合意できるわけもないが、展望を示さなかったのは残念だ。

懸念されるのは、トランプ氏のプーチン氏への宥和(ゆうわ)的姿勢が目立ったことだ。

露軍はウクライナへの無差別攻撃を続けている。だが、トランプ氏は会見でロシアの侵略を批判しなかった。それどころか、両氏は具体的な一致点に全く言及しなかったにもかかわらず、会談を「有益だった」「生産的だった」と振り返った。互いに親密な関係をアピールし合った。強い違和感を覚える。

会談のため米アラスカ州アンカレジのエルメンドルフ・リチャードソン米軍基地に到着し、握手するロシアのプーチン大統領(左)とトランプ大統領=8月15日(ロイター=共同)

北極圏の共同開発やビジネス協力について議論したのも言語道断だ。

トランプ氏は15日、会談後の米FOXニュースのインタビューで、プーチン氏との間でロシアとウクライナの「領土交換」を議題にしたと明かした。「ロシアと合意できるかはゼレンスキー氏次第だ」と述べ、「取引に応じるべきだ」と求めた。

停戦ラインの設定ならまだしも、領土という国家主権の根幹をなす問題でウクライナに譲歩を求めるべきではない。

またトランプ氏は、露産原油の購入を続ける中国やインドなどへの制裁的な関税(2次関税)の引き上げをすぐには考えていないと表明した。ただ、「2~3週間後には考えないといけないかもしれない」とも語った。これまでは、ロシアが停戦合意に応じなければ2次関税を課すとしていたのだから、トランプ氏は明らかに後退したといえる。

侵略続行の時間稼ぎに成功したプーチン氏は高笑いをしているのではないか。

プーチン氏はモスクワでの次回会談を提案した。これではゼレンスキー氏は参加できない。トランプ氏は応じてはなるまい。侵略者には甘い顔を見せず圧力を強めるべきだ。

ウクライナのゼレンスキー大統領(共同)

2025年8月17日付産経新聞【主張】を転載しています

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