全国の高校でも珍しい「女子相撲部」が京都にある。平成27年創部の京都両洋高女子相撲部。男子とともに一緒に練習する一般的な相撲部とは異なり、その名の通り部員全員が女性だ。
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稽古を終えて記念撮影をする部員たち=京都市西京区(渡辺大樹撮影)

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全国の高校でも珍しい「女子相撲部」が京都にある。平成27年創部の京都両洋高女子相撲部。男子とともに一緒に練習する一般的な相撲部とは異なり、その名の通り部員全員が女性だ。「考える」練習を徹底し、全国屈指の強豪となった同部だが、男子と比べて競技の知名度はまだ高くない。スピードや技術面が重視される女子相撲の知られざる魅力を発信したい―。この春、新たに3人が部の門をたたいた。土俵に舞う、女子高校生の青春を追った。

稽古に臨む部員たち。女子相撲ではスピードや技術面が重視される(渡辺大樹撮影)

勝利は目的ではない

4月上旬、京都市西京区の稽古場所「にゃんこ道場」。四股に始まり、すり足、その後は実践的な取り組み形式の練習が行われていた。練習前は和気あいあいと笑顔だった部員らも、始まった途端に真剣な顔立ちで立ち合う。「そこで押すんだ」「行け!」。高橋優毅監督(38)の指導に熱が帯びる。

稽古は週6回。部員は総勢6人で、半数が親元を離れて寮生活を送る。いずれの部員も小中学校時代に高橋さんと出会い、導かれるように同高に入学した。

歴代部員らは創部以来、社会人や大学生も参加する全国大会の個人戦で日本一、団体戦で準優勝、世界ジュニア選手権軽量級で個人準優勝するなど輝かしい実績を残してきた。

稽古の合間に笑顔を見せる部員ら(渡辺大樹撮影)

しかし「試合に勝つのは目標だが、目的にはしない」と高橋監督。「相撲を通して自分の課題を見つけて目標を定め、頑張ることができる選手を育成する」と力を込める。

「考える相撲」を

全国初となる女子相撲部の誕生は、立命館大相撲部出身の高橋教諭が平成26年に京都両洋高へ着任したことがきっかけだった。当時は全国に小、中、大学生向けの女子相撲チームや部はあったが、高校では女子がプレーする環境がほとんどなかった。そうした背景もあり、学校側が部の創部を模索。相撲経験があり、大学時代は女子部員の指導にも携わっていた高橋監督に白羽の矢が立った。

女子の試合では着衣で廻しを締めて土俵に臨む。個人戦は体重別の階級制で行われ、大会前には減量する選手も珍しくない。高橋監督は「軽量級になればなるほど、女子相撲の魅力は際立つ」と語る。力で押す男子の取り組みに比べ、小技やスピード、駆け引きが勝敗を握るという。

「考える練習」を徹底している京都両洋高女子相撲部(渡辺大樹撮影)

男子にはない取り口で勝負する部員もいる。幼稚園のころから相撲一筋で60キロ未満級の早川弥沙さん(2年)は「新しい技を覚えて、実践でかかると楽しい」と魅力を語る。

部では普段から「考えること」を徹底。土俵横には撮影用のスマートフォンとモニターを設置し、直後に映像で自身の相撲を振り返る。目標に向かってどう取り組んだか、そして結果はどうだったか―。稽古後には自らを振り返るシートを記入し、次の取り組みに生かすようにしている。

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固定観念覆したい

女子相撲部員は、男子部員に交ざって練習をするのが一般的。主将の北ゆめ佳さん(3年)は「常に女子と練習できる環境は少ない。ここは女子しかいないので、毎日女子と一緒に練習できるのがいいところ」とメリットを語る。

土俵上で片足を大きくあげてシコを踏む部員たち(渡辺大樹撮影)

課題は女子相撲という競技の知名度の低さだ。競技人口を増やしたい一心で、高橋監督が中心となり園児や小中学生向けの相撲教室などを実施してきた。相撲を巡る「太っている」「パワーがある人が有利」という固定観念を打ち破るのも使命の一つだと痛感する。

海外では「殴らない格闘技」として人気を集める相撲。日本でもその魅力を伝えられる存在でありたい。「女子の相撲って面白そうと思ってくれる人が少しでも増えてほしい」(高橋監督)。交流サイト(SNS)をこまめに更新しては、その奥深さを伝えている。今月13日に行われた国際女子相撲選抜堺大会では団体準優勝に輝いた。6人の力士がこれからも新風を巻き起こす。

筆者:渡辺大樹(産経新聞)

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