大阪・関西万博が閉幕した。開幕前の低調に終わるとの予想を覆して活況を呈したことは、成功といってよいだろう。
Expo 2025 last day

会場で行われた万博閉幕日のドローンショー。最後は空に大きなミャクミャクが浮かび上がった=10月13日午後、大阪市此花区(酒井真大撮影)

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大阪・関西万博が184日間の会期を終え、閉幕した。

158カ国・地域が参加し、延べ2500万人超が来場した。日本国際博覧会協会(万博協会)によると、運営収支は230億~280億円の黒字となる見通しだ。

来場者がそれぞれの楽しみ方を見つけてSNSなどで発信し、共有した人が更新してまた発信する。そんな広がりが独特の一体感を生み出し、来場者が主役となった万博だった。開幕前の低調に終わるとの予想を覆して活況を呈したことは、成功といってよいだろう。

世界とふれあう場所に

平成30年11月に誘致が決まった万博は、建設資材の高騰などで会場建設費が2度上振れした。海外パビリオンの準備が大幅に遅れ、開幕前は期待よりも赤字や安全性への懸念など、ネガティブなイメージの方が大きかった。

だが、そんな風向きは来場者が実体験を「素晴らしい」「よかった」と発信し始めたことで変わった。

効率的な回り方や飲食スポットをまとめた無償の地図などが拡散し、さまざまな楽しみ方が広がった。

大阪・関西万博会場に現れたミャクミャクを一目見ようと多くの人々が集まった=9月21日、大阪市此花区の夢洲(恵守乾撮影)

万博の評価が上がるのにつれ、当初は不評だった公式キャラクター「ミャクミャク」も大人気となった。グッズが飛ぶように売れ、会場内の像周辺は人気の撮影スポットになった。序盤は一般来場者が10万人を下回る日もあったが、8月は15万人前後、9月以降には連日20万人超だった。

テーマの「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現する8つのパビリオンは、AIやアンドロイドと生きる未来での生命のあり方を来場者に考えさせるなど、優れた展示だった。プロデューサーを務めたメディアアーティストの落合陽一さんは、長い行列を物ともせず楽しむ「万博民」と会場スタッフが「一致団結した」と会場の空気感を評価した。

コンセプトである「未来社会の実験場」の目玉だった「空飛ぶクルマ」はデモ飛行にとどまったが、離着陸場の整備が進み、令和9年ごろから商用運航が始まる見通しだ。脈打つiPS心臓や水素燃料電池で動く自動運転トラクターなど、披露された先端技術は、世界が抱える社会課題の解決への道筋を示したといえるだろう。

老若男女が文化や食などさまざまな切り口を通じて世界とふれあい、目を向ける契機となったことも大きい。

ロシアの侵略を受けるウクライナは、地下シェルターの動画など、長期化する戦時下の生活を展示ブースで発信し、過酷な現実を伝えた。

課題も残った。万博を監督する博覧会国際事務局(BIE)への加盟を認められていない台湾はパビリオンを出せず、日本で登記された民間会社名義で出展した。日本の外務省が3月、民間出展であることを明示するよう申し入れたのは、日台友好に水を差しかねない残念な出来事だった。

大阪・関西万博の大屋根リング(2025日本国際博覧会協会提供)

「負の遺産」残さぬよう

東京など関西以外の地域への波及は限定的だった。安全性を確保するための「原則予約」システムは複雑で来場者を苦戦させたうえ、終盤の駆け込み需要には対応できなかった。

9月末から始まった未使用チケットの当日券引き換えには早朝から長蛇の列ができ、関西圏以外からの来場を一層困難にした。「並ばない万博」を目指したはずが大行列が常態化したという結果を、運営側は検証する必要がある。

海外パビリオンの建設では、計11カ国の工事で工事費の未払いに関する相談が万博協会に寄せられ、訴訟になったケースもあった。負のレガシー(遺産)を残さないよう、国や大阪府市、協会はしっかり対応してもらいたい。

シンボルの「大屋根リング」は1周2キロのうち200メートルを残し、周辺敷地は公園・緑地になる見通しだ。パビリオンや展示物の移設計画も進んでいる。

剰余金の使途は今後、万博の成果を検証するために政府内に新設される有識者会議で検討される。

万博のどのようなレガシーをどう残すか、一過性のものとしない取り組みが必要だ。

万博で出合い、生まれた種をよりよい未来社会をつくる指針に結実させてこそ、国際公共財としての万博の意義は果たされることになる。

2025年10月14日付産経新聞【主張】を転載しています

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