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モーター大手ニデックで起きた不適切会計処理問題。ニデックにおいて何が起きているのか、投資家はどのような対応をしていくべきか、ニデック問題について複数回に分けて追っていく。
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ニデック株式会社は、2025年3月末現在で、連結売上高2兆6078億1300万円、従業員数10万人超、海外売上高比率約9割の日本を代表する電気メーカーである。代表取締役グローバルグループ代表である永守重信氏が創業し、その強いリーダーシップの下、国内海外の会社を買収し、今や世界中で事業を展開するグローバル企業となったことが広く知られている。

そのニデックが、2025年9月3日、海外子会社での不適切会計処理の疑いがあるとして、第三者委員会を設置した旨を公表した。その3週間後の同年9月26日には監査法人が「意見不表明」の監査報告書を提出し、10月28日には、東京証券取引所が同社株式を「特別注意銘柄」に指定、翌29日には、格付け機関ムーディーズ・ジャパンがニデックの格付けをA3からBaa1に引き下げる事態に発展した。さらに、11月14日、ニデックは半期報告書を提出したが、第三者委員会による調査は継続中であり、監査法人は「結論の不表明」の中間連結財務諸表に対する期中レビュー報告書を提出した。ニデックは連結子会社342社、持ち分法適用会社4社を抱えており、また、株主数は20万人弱で、国内外の多数の機関投資家や個人投資家が含まれている。

今回、ニデックが起こした不適切な会計処理疑惑については、日本取引所グループも注目しており、ニデックのように、第三者委員会の調査報告書を待たずに特別注意銘柄に指定された例はほぼないという。「特別注意銘柄」に指定されたため、1年後の審査において内部管理体制に問題があると認められる場合には、原則として上場廃止となる。

これらの公表・報道を受け、ニデック株は急落し、これまで9月3日の第三者委員会設置の公表以降、最大で1,237円(約30%)株価が下落した。

ニデックにおいて何が起きているのか、投資家はどのような対応をしていくべきか、ニデック問題について複数回に分けて追っていく。

本稿では、まず、なぜ今ニデックに注目すべきなのかについて解説する。

日本の証券市場の信頼に関わる問題

ニデックは、HDD用モーターを筆頭に数々の製品において世界シェアNo.1を誇る。まさに日本を代表する企業であるが、今回の不適切会計処理疑惑の公表を受け、同社の株価は急落し、監査法人による「意見不表明」や特別注意銘柄指定など、ニデックの不適切会計処理疑惑は、企業統治の信頼性を問う事態に発展した。

ニデックによれば、今回の不適切会計処理疑惑は、ニデック本社及び同社のグループ会社の経営陣が関与していた疑いがあるとのことであり、これが本当であれば、同社のガバナンスには重大な欠陥があったといえる。日本を代表する企業であり、海外売上高比率約9割で海外の機関投資家が多数株主であるニデックにおけるガバナンスの欠陥は、日本の証券市場の信頼に大きく関わる問題であり、日本株全体に対する評価を引き下げる原因となるおそれがある。

不適切会計疑惑についての記者会見の冒頭、謝罪するニデックの岸田光哉社長(中央) =11月14日午後、東京都中央区(三尾郁恵撮影)

株価に与える影響

11月4日、ニデックは東証株価指数(TOPIX)から除外され、11月5日には日経平均株価の構成銘柄からも除外された。インデックスの構成銘柄から除外されると、指数連動のファンドはニデック株を売却する必要があり、株価への下押し圧力となり得る。実際に、ニデックをTOPIX及び日経平均株価の構成銘柄から除外する旨の報道がなされた翌日の10月28日には、ニデックの株価は急落し、ストップ安水準となる前日比500円(19%)安となった。

このように、企業のガバナンス体制は、株価に直結する問題であり、上場企業の経営者は適切なガバナンス体制を構築・維持することに心を砕く必要がある。今後、投資家はガバナンス体制に心を砕いていない企業に投資することを回避する傾向が強まるであろうし、ガバナンス体制に欠陥があり株価が下落した場合は法的措置が執られる傾向が強まるであろう。

ニデックの不適切会計問題は、単なる一過性のトラブルではなく、企業の構造的健全性、経営陣の信頼性、コンプライアンス文化を評価するための重要なシグナルである。海外投資家にとって、これは日本市場におけるガバナンスリスクを再考し、投資戦略を見直す契機とすべきである。

本連載においては、以下の項目を連載する予定である。

  1. なぜ今ニデックに注目すべきか
  2. ニデックに何が起きたのか
  3. ニデックは今後どうなるのか
  4. 投資家はどのように救済されるか

著者:藤井雅樹、山内大将、百田博太郎(弁護士)

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