
東シナ海の日中中間線付近に中国が設置した構造物を海上自衛隊のP3C哨戒機から視察する自民党の小野寺五典政務調査会長(左から2人目)ら=6月29日(自民党HPより)
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東シナ海の日中中間線の西側海域で、中国による構造物設置に向けた動きが確認された問題で、現場海域では2隻の大型船が作業をしているとみられることが6月30日、欧州宇宙機関(ESA)の衛星画像や船舶自動識別装置(AIS)のデータから明らかになった。中国による構造物設置に向けた動きは、5月にも今回の場所から南西に45キロ離れた海域で確認されている。同海域ではこれまでに、中国が5月の確認分を含め19基の構造物を設置し、今回の動きは20基目の設置となる可能性がある。

海上保安庁が24日発表した航行警報などによると、中国の今回の動きは久米島(沖縄県久米島町)の北北西約360キロ沖で確認された。航行警報は「海上プラットフォームの架台らしきもの存在」として、周辺の船舶に注意を呼びかけている。
日本政府は、中国が資源開発のために設備を設置するものとみており、外務省の金井正彰アジア大洋州局長は24日、在日中国大使館の施泳(し・えい)次席公使に強く抗議した。29日には、自民党の小野寺五典政務調査会長らが海上自衛隊のP3C哨戒機で現場海域を上空から視察した。
ESAの地球観測衛星「Sentinel-2」が撮影した画像や、船舶のAISの情報などを提供するWEBサイト「MarineTraffic」のデータを基に産経新聞が分析したところ、中国船籍の大型船2隻が現場海域に停泊していることが分かった。2隻は19日午前0時ごろ現場海域に到着し、20日以降は横並びになり、ほぼ同じ場所にとどまっている。
2隻は、全長297メートルの大型クレーン船「振華30」と、153メートルの重量物運搬船「海洋石油226」。衛星画像などから、振華30は5月にも構造物の設置作業をしていたとみられている。海洋石油226は、周辺海域で一方的な資源開発を続ける中国海洋石油(CNOOC)が保有する船舶だ。
AISデータには、大型船2隻にタグボートが接近する記録も残されており、設置作業が活発に行われているとみられる。
同海域は、排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の境界が未画定となっており、中国による一方的な構造物設置は国連海洋法条約に反している。
日中両政府は2008年にガス田共同開発で合意し、境界画定が実現するまでの間、双方の法的立場を損なうことなく協力することで一致している。外務省は24日の抗議に関連し、ガス田共同開発の合意に基づく交渉再開に早期に応じるよう強く求めた。
一方、中国外務省の郭嘉昆(かく・かこん)報道官は25日の記者会見で、「日本による根拠のない非難を受け入れない」と反論。「日本が中国に歩み寄り、政府間交渉をできるだけ早期に再開することを希望する」と述べた。

外務省の担当者は「日中の両首脳は、東シナ海を『平和・協力・友好』の海とする目標を実現することで一致している。中国側には、一方的な開発や既成事実化の試みを止めるように強く求めている」と話した。
中国がこれまでに設置した構造物はヘリポートを備えていることなどから、軍事利用の可能性も指摘されている。2022年には、当時の松野博一官房長官が、「これまでに設置が確認された18基の構造物のうち1カ所でレーダーなどの機器の設置が確認されている」と述べている。
筆者:西山諒(データアナリスト)
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