
中国軍が実施した実弾による射撃演習として、4月2日に公開された動画の一場面(中国中央テレビの映像から、共同)
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中国が無謀な火遊びをまた行った。中国軍が台湾海峡の封鎖などを想定し、2日連続で行った大規模な演習である。
台湾の国防部(国防省に相当)によると、台湾の東側海域に空母「山東」を展開したほか、軍艦、海警船など数十隻が台湾を取り囲むように展開した。上空では多数の軍用機が台湾海峡の暗黙の休戦ラインである中間線を越えた。
北東アジアの平和と安定を乱す行動で許されない。

中国軍はこの演習を、激しい雷と憤りを意味する「海峡雷霆(らいてい)―2025A」と称した。船舶の臨検・拿捕(だほ)や港湾施設への精密攻撃など海峡封鎖に必要な能力を検証したといい、映像も公開した。台湾に心理的圧力を加えるためだ。
中国軍は昨秋にも台湾を包囲する演習を行った。今回はトランプ第2次米政権が発足し初めて公表した演習である。中国を「敵対勢力」と位置づけた台湾の頼清徳政権を牽制(けんせい)するとともに、トランプ政権の出方を見極めようとしたのは明白だ。
3月30日に中谷元・防衛相と会談したヘグセス米国防長官は「中国による侵略阻止」を目的に、日米同盟による抑止力強化を明確に打ち出した。
演習開始はその翌々日である。米国務省が声明を発表し、「中国の台湾に対する攻撃的な軍事活動や言説は緊張を悪化させ、地域の安全と世界の繁栄を危険にさらすだけだ」と非難したのは当然だ。
中国の習近平政権は、2027年までに台湾侵攻の準備を完了するよう軍に指示している。台湾の海上封鎖は、米軍の介入を排して部隊を上陸させるために不可欠な作戦である。
米シンクタンクの分析によれば、習政権は、軍事侵攻に至らずに威圧行動と米台離反により台湾併吞(へいどん)を実現するシナリオも追求し、ここでも海上封鎖は重視されている。台湾の人々に恐怖と不信を植え付け、28年の総統選で与党の民主進歩党を下野させたい。その有効な威圧のプロセスと考えているからだ。
今回の封鎖演習は、侵略に直結する軍事的威嚇であり、最大限の警戒を要する。中国外務省は、懸念を伝達した日本政府に「強烈な不満と断固たる反対」を表明した。石破茂政権は、地域の平和を損なう中国に厳しく対峙(たいじ)してもらいたい。
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2025年4月6日付産経新聞【主張】を転載しています
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