中国共産党の4中総会に出席した習近平国家主席(中央)と幹部ら=北京(新華社=共同)
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中国の独裁政党である共産党の機関紙などが、琉球諸島の日本帰属に疑義を呈するプロパガンダ(政治宣伝)を始めている。
だが、沖縄県が日本国の一部である点には少しの疑いもない。中国共産党は言いがかりそのもののプロパガンダを直ちにやめるべきだ。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は11月19日、「琉球諸島の主権の帰属について歴史的、法的な議論が常に存在している」とする一方的な社説を掲載した。「琉球学の研究はなぜ必要なのか」と題し、かつて中国が琉球王国を手厚く遇したと唱える一方、日本が「武力による脅迫で琉球藩の廃止を強行し、沖縄県を設けて併吞(へいどん)した」と難じた。「主権の帰属」が議論になっているとした。

環球時報は21日にも沖縄県の「帰属」に疑義を示す記事を掲載した。北京市共産党委員会の機関紙、北京日報系のSNSアカウントは「琉球は昔から一度も日本の国土となったことはない」と主張した。対外宣伝を担う中国外文出版発行事業局が運営するニュースサイト、中華網は「日本が台湾問題で火遊びを続けるならば、琉球問題が新たに交渉のテーブルに置かれる」と報じた。
中国政府を支配する共産党が高市早苗首相の台湾有事に関連した発言を撤回させるため、ありもしない「帰属問題」を言い立てている構図だ。
琉球王国は1429年に成立したが1609年に薩摩藩に征服され、長く従属した。これを受けて明治維新後、琉球国王は藩王と華族に列せられ、その後、沖縄県が設置された。

先の大戦では特攻隊を含め多くの日本の若者が沖縄防衛に殉じた。大戦後の沖縄は米国に統治されたが、日本に残存主権があるとサンフランシスコ平和条約は認めていた。島ぐるみの祖国復帰運動を経て施政権が日本に返還された経緯がある。
また、日中国交正常化時に中国は沖縄の帰属について取り上げなかった。中国共産党のプロパガンダは、その主張の不当性もさることながら、「領土保全の相互尊重」をうたった日中共同声明に明確に反する。
高市政権と沖縄県の玉城デニー知事は、沖縄に対する野心を曝(さら)け出した中国共産党の不当な分断工作をはねつけなければならない。
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2025年11月24日付産経新聞【主張】を転載しています
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