中国外務省の記者会見を撮影するカメラ。中国メディアは連日、対日批判を展開している
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台湾有事を巡る高市早苗首相の発言に反発する中国が、国連などへ日本批判を繰り返したり、国連憲章のうち死文化した旧敵国条項を持ち出して対日威嚇をしたりしている。
中国の行動は的外れで日本でも国際社会でも相手にされてはいない。その独善性や執拗(しつよう)さにはうんざりするが、日本政府は的確な反論を続けてほしい。
中国の国連大使は、首相答弁撤回を訴える書簡をグテレス国連事務総長に2度も送付した。書簡は「(日本が)台湾問題で武力介入をたくらむ野心を初めて表明した」と主張した。

首相の発言は、同盟国の米軍が攻撃された場合に、集団的自衛権行使の前提となる「存立危機事態」を認定する可能性への言及である。国連憲章が認める自衛の文脈の話にすぎない。
日本の山崎和之国連大使はグテレス氏に書簡を送り、「武力攻撃が発生していないにもかかわらず、日本が自衛権を行使するかのごとき中国の主張は誤っている」と反論した。グテレス氏が中国の書簡に同調していないのは当然である。

中国は西欧諸国などに対しても日本の非を鳴らしたが、同調する国はほとんどない。足並みをそろえたのは、中国と同じ専制国家でウクライナを侵略中のロシアくらいである。
在日本中国大使館も国連大使に負けじと、第二次世界大戦の敗戦国が「侵略政策に向けた行動」をすれば、中国を含む国連創設国は旧敵国条項に基づいて「直接軍事行動を取る権利を有する」などとXへ投稿した。
だが、旧敵国条項は30年も前の国連総会で、早期削除を求める決議が圧倒的多数で可決された。いわゆる死文化の決議である。中国は自国が賛成票を投じたのを隠し、日本へ武力行使の恫喝(どうかつ)をしてきた格好だ。国交正常化時の日中共同声明で「武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認」したことへの明確な違反で常軌を逸している。

同大使館はXへの投稿で、首相が党首討論で引用したサンフランシスコ講和条約についても「不法かつ無効な文書」と断じた。同条約で日本は台湾への全ての権利を放棄したが帰属先には触れていない。同条約は戦後国際秩序の基盤の一つである。その否定は、法とルールに基づく国際秩序を顧みない中国の本性を曝(さら)す結果となった。
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2025年12月5日付産経新聞【主張】を転載しています
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