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クマによる人身被害が深刻化している。高市早苗内閣は、環境省などによるクマ対策の閣僚会議を開いた。自治体との連携を密に取りながら、政府を挙げて包括的なクマ対策に取り組んでもらいたい。
Bear management coordination petition

木原稔官房長官(左から3人目)にクマの被害対策を巡り緊急要望する国民民主党の舟山康江参院議員会長(左端)ら=国会内(奥原慎平撮影)

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クマによる人身被害が深刻化している。今年度の死者数は10人以上で、最悪だった令和5年度の6人を上回る。人が被害に遭う状況が従来と異なる点に注意したい。

かつては山菜採りなどで山に入った人がクマと遭遇して襲われる事故が主だった。それが近年はクマが人の生活圏に入り、市街地で人を傷つけるアーバンベア事案が目立つようになった。

今年はさらに一線を越え、人を襲う行動が各地で報告される。この変化が気掛かりだ。

高市早苗内閣は10月30日、環境省など8省庁によるクマ対策の閣僚会議を開いた。自治体との連携を密に取りながら、政府を挙げて包括的なクマ対策に取り組んでもらいたい。

山口県萩市の里山で撮影されたツキノワグマ。アライグマの生息調査カメラに映った=令和4年9月(山口県農林総合技術センター提供)

異常事態の背景は複雑だ。ブナの実などの堅果類の凶作で山の餌が乏しくなった。加えてシカなどが増加し、ツキノワグマが死骸を食べるうちに肉食嗜好(しこう)を強めている兆候がある。

人を襲う行動には、森林環境の劣化も関係しているのでないか。再生可能エネルギーによる脱炭素の名のもとにメガソーラーや風力発電の拡大が著しい。巨大風車の発する低周波音が奥山の静けさを奪い、山肌を覆う太陽光パネルがクマの生息域を圧迫している可能性を政府は調査すべきである。

改正鳥獣保護管理法で、市街地に出没したクマに対する「緊急銃猟」を市町村長が指示できるようになったが、ハンターの高齢化が進み、即応体制は脆弱(ぜいじゃく)だ。国と自治体は担い手育成を含めて地域を支えてほしい。

寺の敷地に入り込んだクマ=盛岡市

秋田県の要請で自衛隊も出動することになった。クマの殺傷ではなく、箱わな設置や猟友会が駆除した個体の処理などを支援する。事は急を要する。即応力、組織力を有する自衛隊の出動は妥当だ。ただし、自衛隊は激しい演習を通じ、クマよりも強い外敵に備えなければならない。来年以降は自衛隊に依存せず、自治体職員や警察官を動員する体制を整えるべきだ。

クマが人里に来ないようにする対策も必要だ。里山の果樹などの誘因源を整理し、電気柵や監視装置を整備したい。クマが市街地に侵入する際に通る河川敷の草刈りも効果的だ。

大事なことは、「距離の再構築」による人とクマの棲(す)み分けである。生態学と地域の知恵を総動員して当たりたい。

2025年10月31日付産経新聞【主張】を転載しています

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