
高齢者がペットと健康に長く暮らすには支援や仕組みが必要
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ペットと暮らす高齢者は多い。シニア世帯や1人暮らしにペットは癒やしと張りを与えてくれる存在だ。世話をすることで要介護リスクが低減するという研究結果もある。
一方で、病気や不意のけがなどで急に飼えなくなる場合も少なくない。「飼いたいが飼えない」といった声も聞く。
高齢者がペットと健康に長く暮らすにはどのような支援やしくみが必要か。「敬老の日」を迎え、改めて社会全体で考える機会としたい。
令和6年のペットフード協会の調べによると、全国の犬の飼育頭数は約680万匹、猫は約900万匹で、飼っている世帯割合はそれぞれ全体の約9%だった。ウサギや鳥、魚類なども加えるともっと多いだろう。

60代以上の飼育者や同居の両親・祖父母がいる世帯にシニアに対するペットの効用を聞くと、犬猫ともに「家族との会話量が増えた」「表情が明るくなった」が上位を占めた。
動物好きの人にとってペットと暮らすことは、日常生活の質を上げることにつながる。
東京都健康長寿医療センターのこんな研究結果も話題になった。犬を飼っている人は、飼っていない人に比べて認知症の発症リスクが約40%低かったという。猫では大きな変化はなかった。犬の散歩による運動や、社会交流などが要因になっているとみられる。
ただ、高齢者ならではの問題がある。犬猫で平均10~20年という寿命を飼い主として全うできるかだ。飼いやすく、コミュニケーションも楽しめるインコやオウムなども人気だが、とりわけ鳥類は長寿ということにも留意したい。
動物愛護管理法でペットの終生適切飼育を求めている。飼い始めたら最後まで面倒をみるのは当然だが、ペットを飼うにはコストもかかる。ネグレクト(飼育放棄)による虐待や捨て犬の野犬化、多頭飼育崩壊なども社会問題化している。
いざというときに困らないよう家族や親族に頼む、施設や団体に託すといった準備をしておくべきだろう。近年シニア向けの飼育支援サービスを手掛ける企業や団体も増えている。
高齢者がペットと暮らすメリットを享受しつつ、生活を支える方策を増やし、人にも動物にも優しい社会を目指したい。
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2025年9月15日付産経新聞【主張】を転載しています
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