
コメ不足はいつまで続くのか
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「コメは買ったことがない」などと発言した江藤拓農林水産相が更迭された。
だが、石破茂首相による更迭の判断は遅きに失した。猛省すべきである。
江藤氏は米価高騰を巡り、「支援者の方々がたくさん下さるので、家の食品庫に売るほどある」と述べていた。
価格を低下させることができなかったにもかかわらず、このような発言をした江藤氏は、農政の責任者としての自覚と資質を著しく欠いていたと言わざるを得ない。
理解に苦しむのは、石破首相が当初更迭を否定し、江藤氏を守ろうとしたことだ。国民の信頼がなくても、政策を遂行できると思っていたのだろうか。
野党5党が更迭を求める方針で一致し、農水相の不信任決議案が可決される見通しが高まったことで、石破首相は翻意した。政権への打撃は大きい。
江藤氏の発言に国民が反発したのは、いつまでたっても米価の低下を実現できなかったからだ。そこへ呆(あき)れた失言である。世論から辞任を求められてもやむを得まい。

21日の党首討論では、国民民主党の玉木雄一郎代表が米価の問題を取り上げた。
石破首相は価格を抑制する方策を問われ、「スーパー、小売りの現場から卸、生産者、集荷業者に至るまで、どこに、なぜ、どれくらいのものが滞留しているかを把握しなければならない」と述べた。いまだに詳細な実態が分かっていないことが露呈した。これでは確実な価格低下は望めない。
石破首相はコメ5キロ当たりの価格について「3千円台でなければならない。一日でも早くその価格を実現する」と語った。実現できなかった場合に責任をとるかを質(ただ)されると、「なぜ下がらないかをきちんと説明するのは政府の責任だ」とはぐらかした。

江藤氏の後任に起用された小泉進次郎元環境相にも不安が残る。小泉氏は自民党農林部会長の経験者で、農協改革を唱えたことがある。だが、特筆すべき成果をあげたとは聞かない。農政通とも思えない。
国民生活に直結するコメ政策の足踏みはこれ以上許されない。小泉氏にとっては正念場だ。相当な覚悟で臨み、必ず成果を出してもらいたい。
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2025年5月22日付産経新聞【主張】を転載しています
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