
防衛装備や兵器の見本市「DSEI Japan」を視察する石破首相(前列左から2人目)=5月22日午前、千葉市
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世界33カ国471社が参加
2025年5月21日から23日にかけて、千葉・幕張メッセで日本最大級の防衛装備品展示会「DSEI Japan 2025」が開催された。英国発祥のこの展示会は、日本では2021年から隔年で開催されており、今回で3回目。世界33カ国から471社が出展し、過去最大規模となった。日本企業の出展も全体の約4割を占め、防衛産業への関心の高まりがうかがえる。
現職首相として初、石破茂首相が講演
22日には石破茂首相が現職首相として初めて同展示会に出席し、講演を行った。首相は「装備品の移転、共同開発、共同生産の協力を進めることは、日本や地域の平和と安定を図る上で極めて重要だ」と述べ、同盟国や友好国との防衛装備協力を推進する姿勢を明確にした。
また、中国の東・南シナ海での「一方的な現状変更の試み」、北朝鮮の弾道ミサイル発射、さらにロシアと北朝鮮の軍事協力に言及し、「安全保障環境は厳しさを増している」と強調。「装備協力は自国のみならず、同盟・同志国の抑止力を強化する取り組みになる」と語った。

日・英・伊の3カ国が進める次期戦闘機「GCAP」の共同開発についても「今後何世代にもわたり、英国、イタリアとの幅広い協力の礎となる」と意義を強調した。首相は会場内の最新装備品の展示も視察した。
陸・海・空の最新技術が集結
展示会では、兵士の装備や小火器から大型艦船、無人機、サイバー対策装備まで、幅広い分野の最新技術が紹介された。防衛省は極超音速ミサイル迎撃を想定した「レールガン(電磁砲)」の模型を展示し注目を集めた。

地政学的リスクの高まりを背景に、無人機や自動化・省力化された装備の需要が増加するほか、兵士の安全を確保するための技術革新も加速している。
スウェーデンのSAAB社は対戦車無反動砲のトレーニングシステムを、トルコのOTOKAR社は対戦車地雷対策装甲車を展示。ウクライナ企業もドローンによる精密攻撃システムを紹介し、実戦経験を活かした技術に注目が集まった。

インド太平洋における日米連携
21日には米国パビリオンの開会式に、ジョージ・グラス駐日米国大使が出席。「インド太平洋地域の同盟国の協力、共同開発や共同生産が重要で、日米の防衛産業の連携は欠かせない」と述べ、地域の安定と抑止力強化を呼びかけた。

川崎重工業は最大200kgの物資を運搬可能な無人ヘリコプターを展示。島嶼防衛への活用が期待されている。また、楽天グループはウクライナ政府機関と連携し、現地スタートアップ企業を支援していることをアピールした。


同日、会場を視察した中谷元防衛大臣は、「自衛隊の入隊者が減少しており、無人機や省力化装備の導入が不可欠だ」と述べた。自衛隊の定員は約24万7000人だが、2024年末時点で2万3000人が不足している。
進化迫られる日本の防衛
日本の防衛体制は進化を続けている。2025年度防衛予算は8兆4748億円(前年比9.7%増)で、GDP比1.8%に達した。宇宙空間に特化した「宇宙作戦群」も2020年に航空自衛隊に創設された。北朝鮮の駆逐艦の進水式での座礁も海外企業が衛星写真で即座に捉えるなど、宇宙監視の重要性が高まっている。

石破首相が言及した開発中の次期戦闘機「GCAP」は、米国のステルス戦闘機F35の性能を上回ると期待されている。
ただ、中国やロシアは、急速に軍拡を推進しており、日本の防衛はさらなる進化が求められていると言えそうだ。
著者:海藤秀満(JAPAN Forwardマネージャー)
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