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国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)がカスピ海の西岸に位置するアゼルバイジャンで、11月11日から12日間の日程で始まった。
気温の上昇傾向が続く中、今年も地球の平均気温は前年を上回る勢いだ。世界各地で猛暑や旱魃(かんばつ)、洪水などの気象災害が多発した。国連は産業革命前と比べた気温上昇幅を1・5度以内に抑えようとしてきたが、今年はそれが突破されるとの事前情報も公表されている。
こうした諸状況に囲まれたCOP29では、加盟国に二酸化炭素など温室効果ガス(GHG)排出削減目標の積み上げが求められよう。また5年ごとに各国は削減目標を見直し、次は2035年の新目標を国連に提出しなければならないが、その期限は来年2月に迫る。COP29は先進国に削減増の圧力がかかる厳しい会議となるだろう。
同時に、途上国への「気候資金」の増額も主要議題だ。異常気象などを伴う温暖化に脆(ぜい)弱(じゃく)な途上国は、災害防止工事や社会経済の脱炭素化のための資金提供を以前から訴え続けてきた。温暖化は工業化を進めた先進国によって引き起こされた災害であり、途上国は被害者という意識に基づく要求だ。
ここで看過できないのが中国の存在だ。現在、世界のGHG排出の32%を占める第1位の排出国で、米国に次ぐ経済規模と軍事力を持ちながら、国連気候変動枠組み条約では「途上国」の位置付けである。
温暖化問題での中国は資金援助をする側の一員ではなく、受ける側の代表格として振る舞っている。一方、日本のGHG排出量は世界の3%に過ぎない。このため日本が骨身を削る努力で半減しても世界では1・5%減にしかならない計算だ。
日本の現行目標は2030年度までに46%減(13年度比)だが、原発が減り、再稼働も牛歩の現状では達成は容易でない。これ以上、削減目標を引き上げれば排出量取引で、不足分を海外から高額で購入する事態に陥ることになるだろう。
化石燃料を重視するトランプ政権への移行で、米国のCOP離脱も現実味を帯びる。地球温暖化問題はGHGを軸とする経済戦争でもある。COPでの交渉は理想論とはほど遠い。各国の利害が交錯する現実を忘れると日本の将来が危うい。
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2024年11月13日付産経新聞【主張】を転載しています
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