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宇宙事業会社のスペースワンが小型ロケット「カイロス」2号機の打ち上げに失敗した。初号機に続く2回連続の失敗だ。開発体制を総点検し、立て直す必要がある。
カイロス2号機は12月18日、和歌山県串本町の発射場から打ち上げられたが、1段目の燃焼ガスを噴出する装置の動作に異常が生じ、安全措置のため打ち上げ約3分後に自動で爆破された。
成功すれば、国内初の民間単独による衛星の軌道投入となるはずだった。3月には初号機が打ち上げ直後に失敗しており、再び試練に立たされた。
ロケットが開発の初期段階で打ち上げに失敗するのは、よくあることだ。その検証過程で潜在的な不具合があぶり出され、信頼性が高まっていく。イーロン・マスク氏が率いて急成長を遂げた米スペースX社も当初は失敗を重ねた。
2回連続の失敗でも決して萎縮する必要はない。だが結果は謙虚に受け入れるべきだろう。原因を解明して再発を防止するとともに、他にも不具合がないか徹底的に点検すべきだ。
搭載した台湾国家宇宙センターなど国内外の衛星5基は失われてしまった。顧客の信頼回復にも努めなければならない。
カイロスは世界的に需要が増加している小型衛星を打ち上げるビジネスへの参入を目指している。失敗続きでは事業の展望を描けない。
日本のロケット開発は官主導で行われてきたが、政府は民間を育成して打ち上げの機会を増やし、国際競争力を高めることを目指している。2030年代前半までに官民で年間30回の打ち上げが目標だ。
ただ、国の基幹ロケットは小型機イプシロンと大型機H3が近年相次いで失敗しており、カイロスの成否は日本の宇宙戦略でも重要な意味を持つ。
衛星打ち上げビジネスは米国などが先行し、競争は激化している。早期の参入には開発のスピード感が大切だ。しかし、不十分な検証でさらなる失敗を繰り返せば本末転倒である。
信頼性の確保はロケット開発の根幹だ。機体の設計や評価、試験方法などあらゆる角度で問題点を洗い出し、一定の時間がかかったとしても万全の構えで再挑戦してほしい。大きく飛躍するには足元をしっかり固めることが肝要だ。
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2024年12月22日付産経新聞【主張】を転載しています
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