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日本の新たな宇宙飛行士が13年ぶりに誕生した。米田あゆさんと諏訪理(まこと)さんが基礎訓練を終え、宇宙飛行士として正式認定された。月探査に挑む新時代の門出を祝福したい。
人類の宇宙活動は歴史的な転換期を迎えている。滞在拠点の国際宇宙ステーション(ISS)が2030年に運用を終える一方、米国が主導する月探査「アルテミス計画」の時代が幕を開ける。
日本はこの計画への参加を決めており、2人の日本人が月面に着陸する。時期は20年代後半以降で、人選はまだ先だが、今回の2人はその有力候補だ。
月では病気やけがで治療が必要になっても、地球に近いISSと違ってすぐには帰還できないため、医師の存在は非常に重要だ。外科医出身の米田さんは大きな力になるだろう。
アルテミス計画では日本が開発する月面探査車を飛行士が運転し、地質や資源の調査を行う。大学院で地球科学を専攻し、地学に詳しい諏訪さんは打って付けだ。
人類が月に行くのは米アポロ計画以来、約半世紀ぶりで、日本は初めての挑戦になる。日本人の月面着陸は国民に大きな感動と勇気を与えるだろう。月に降り立ったとき、どんなことを言うのか今から待ち遠しい。
日本の宇宙飛行士は約30年前に毛利衛さんが米スペースシャトルに初搭乗して以来、活躍の舞台と役割を広げてきた。若田光一さんが日本人初のISS船長を務めて以降、国際的な評価は格段に高まった。
月はISSと比べてはるかに遠く、地球との通信が難しい。運び込む機材も限られる。このため飛行士は地球からの支援に頼らず、状況に応じて自律的に判断するより高い能力が求められる。日本人の着陸は米国人以外では初の快挙になる。実力と存在感を世界に示す好機だ。
ただ、有人月探査には巨額の予算が必要になる。政府は外交や安全保障、宇宙産業の強化などの観点で意義があるとしているが、国民に対して丁寧に説明すべきだろう。
飛行士も宇宙の魅力や夢だけでなく、有人活動がなぜ必要なのか語るべきだ。米田さんと諏訪さんは、日本人が月に行く意義を自分の言葉で発信してほしい。国民の心に響けば深い理解と後押しにつながるはずだ。
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2024年11月4日付産経新聞【主張】を転載しています
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