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石破茂首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が、国会で行われている。
政治とカネの問題について活発な論戦が展開される一方で、外交安全保障の議論が低調なのは残念だ。
自民党の松山政司参院幹事長は、中国が台湾を巡り「必ず完全統一を実現する」と主張していることや、ウクライナ侵略を続けるロシアと北朝鮮との関係強化に触れ、東アジアの安保環境が大きく揺らぐことのないよう、着実な防衛力の強化を求めた。
首相が答弁で抑止力と対処力の強化を図るとしたのは妥当だが、「台湾海峡の平和と安定」が重要だという問題意識や、そのための具体的方策を語らなかったのはいただけない。
安全保障を真剣に考えていないとみなさざるを得ないのは最大野党の立憲民主党だ。野田佳彦代表は日中関係を巡り、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への中国の加盟問題や相次ぐ邦人の拘束などを取り上げたが、首相同様に「台湾」への言及はなかった。
野田氏はロシアと北朝鮮の軍事協力を踏まえ、朝鮮半島有事の際のロシア参戦の恐れを指摘し、「わが国の安全保障上の危機」との認識を示した。それはもっともだが、ロシアのウクライナ侵略自体も論じるべきではなかったか。
辻元清美代表代行は5年間の防衛費43兆円について「軍事から人へ付け替えたらどうか。足かせになっている」と語り、別の用途への充当を求めた。これは、力の信奉者である中国や北朝鮮などに誤ったメッセージを送り、平和を保つ抑止力を低下させてしまう危うい議論だ。もし、台湾有事などが起きれば、国民の生命や巨額の国富が失われてしまうのである。
代表質問に立った公明党や立民など各野党が台湾問題を重視しないのは理解に苦しむ。
政治とカネの問題では立民や日本維新の会、共産党が企業・団体献金の禁止を求め、首相は「不適切だとは考えていない」と答弁した。企業・団体の政治活動の自由も引き続き認められるべきである。
立民、共産は選択的夫婦別姓導入を求めたが、首相が慎重姿勢を示したのは当然だ。選択的といっても、片方の親と子の「強制的親子別姓」である点を無視する謬論(びゅうろん)だからだ。
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2024年12月4日付産経新聞【主張】を転載しています
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