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自民、公明両党の外交感覚を疑う。
両党幹事長らが、1月13日から3日間の日程で中国を訪問する。独裁政党である中国共産党との「日中与党交流協議会」開催のためだ。同協議会は平成30年10月以来となる。
訪問の順番を間違えていないか。石破茂政権を支える与党の最高幹部がまず赴くべきは同盟国米国であろう。
日中与党協議会は18年に始まったが、中国は今や日本にとって最大の脅威になった。呼ばれたからといって、時期を選ばずに喜々として訪中する時代ではなくなった。訪問には具体的な成果が求められるが、その見通しがあるとも思えない。
米国では1月20日、トランプ氏が2期目の政権を始動する。日米同盟を外交安保の基軸とする日本は、まず対米関係を固めなければならない。政府の外交を補完する上で、政党、政治家による米政府、議会関係者との意思疎通は有効だ。
トランプ氏の厳しい対中姿勢におびえる中国は日本に実のない秋波を送っている。与党協議会の誘いはその一環だろう。
自民の森山裕幹事長は「政府間、政党間、議員間という重層的な関係の中で対話を重ねることが大事だ」と述べた。
だが、過去の協議会でも日中関係が具体的に改善した話は聞いたことがない。漫然と訪問しても、融和ムードを演出したい中国側を喜ばせるだけだ。
森山氏は「世界が内向きになりつつある。内向きのチャンピオンは、間もなく就任するトランプ氏だ」とも語った。
同盟国の首脳を安易に揶揄(やゆ)する森山氏は最大与党の責任者である自覚に欠ける。トランプ政権を危惧するなら訪米し、日本のために働いたらどうか。
協議会では公明が、多国間安全保障対話の枠組みである欧州安保協力機構(OSCE)のアジア版創設を提案するという。だがOSCEの前身組織は、北大西洋条約機構(NATO)の結束があってこそ、西側が東側と対話に臨むことができた。
訪中を優先する自公幹事長には、この点への理解があるとは思えない。安易な提案は中国に利用されるのではないか。
中国共産党との「友好」行事を惰性で続けるのは危うい。それでも北京詣でをしたいなら、不当に拘束された邦人全員を取り戻してもらいたい。
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2025年1月11日付産経新聞【主張】を転載しています
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