天皇陛下は、皇后さまと国賓としてモンゴルを訪れるのを前に、皇居で記者会見に臨まれた。記者会見の全文(下)は以下の通り。
Emperor Naruhito Mongolia press conference

モンゴル訪問を前に記者会見される天皇陛下=7月2日午後、皇居・宮殿「石橋の間」(代表撮影)

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天皇陛下は7月2日、皇后さまと6日から国賓としてモンゴルを訪れるのを前に、皇居・宮殿「石橋(しゃっきょう)の間」で記者会見に臨まれた。

>抑留者の苦難、思いはせ慰霊 会見全文(上)

記者会見の全文(下)は以下の通り。

――大阪・関西万博が開幕し、皇室の方々は各国の賓客と交流される機会が増えています。陛下は皇室の国際親善の役割をどのようにお考えでしょうか。両陛下のモンゴル訪問に続き、11月には愛子さまにとって初めての外国公式訪問となるラオス訪問も検討されています。愛子さまの準備の状況、期待されていることをお聞かせ下さい。陛下の初の外国公式訪問を踏まえて、助言されていることもお聞かせください。

「皇室の国際親善の役割については、皇室が果たすべき役割の中で大事な柱の一つと考えており、私としても、訪日された賓客との交流や外国訪問に際しては、我が国と相手国との交流の歴史を踏まえ、今後の相手国との友好親善関係が更に深まるよう努めていきたいと考えております。大阪・関西万博の関係では、これまでも旧知の王室の方々や大統領などとお会いして旧交を温めることができましたし、また、初めてお会いした国家元首の方々などもおられ、お話を通じて、それぞれの国についての理解を深めることができてきていることを有り難く思います」

「また、愛子のラオス訪問については、ラオス政府から本年11月に御招待いただいたことに対し、愛子はもちろん、私と雅子も大変有り難いことと思っております。訪問時期がまだ少し先ということもあり、準備については今後進めていくことになると思いますが、愛子のラオス訪問が、先ほど申し上げたとおり、我が国とラオスの友好親善関係の増進につながることを願っています。私自身も平成24年にラオスを訪問する機会があり、ラオスの国民の皆さんに温かく迎えていただいたことをうれしく思いましたし、ラオスの人々が餅米を食べる習慣があるなど、日本とも共通する文化を感じることができました。私と雅子からもこれまでの外国訪問の経験を踏まえつつ、愛子に助言をしていくことができればと考えています」

外国訪問の経験を踏まえ助言

「なお、先般ブラジルを訪問した佳子内親王から帰国後の挨拶を受けた際には愛子も同席しており、佳子内親王からブラジル訪問の様子などを詳しく聞いておりましたので、こうした機会も通じて、愛子自身も皇室の外国訪問について学ぶことができたのではないかと思いました」

――モンゴルの首都、ウランバートルへの人口集中による都市問題が深刻化し、JICAなどを通じ上下水道など社会インフラ整備の協力が行われています。水問題についてのご造詣が深い天皇陛下はモンゴルの都市開発にどのようなご関心をお持ちでしょうか。また、日本の国際協力は両国の友好関係にどのように寄与していると思われますか。

「平成19年にモンゴルを訪れた際、首都ウランバートルはトーラ川の支流沿いに都市が発達していましたし、古都カラコルム、ハラホリンではオルホン川沿いに都市が形成されていました。草原と砂漠の国という印象があるモンゴルでも、川の豊かな恵みを受けて都市が発展していることを知り、深い感慨を覚えたことを思い出します」

「私がいつも感じていることですが、災害に対応しながら水の恩恵を享受することは、人類共通の歩みでもあり、各国の水をめぐる問題を知ることは、それぞれの国の社会や文化を理解することにもつながります」

「今回、ウランバートル市上下水道公社本部やガチョールト水源を訪れる機会があります。そこで日本の経済・技術協力が行われていることをうれしく思いますし、モンゴルにおける都市開発や水の問題について学ぶことを通じて、この国への理解を更に深めることができればと思っています」

「また、1990年代以降、モンゴルの民主化を契機に、我が国はモンゴルと幅広い分野での協力関係を進展させてきており、こうした長年の協力関係を通じてモンゴルの方々は日本への信頼と親近感を持っておられると聞いております。今回の私と雅子の訪問が、日本とモンゴルの従来からの親密な友好関係を一層強める機会となれば幸いです」

ウランバートル市第149番学校に到着し、出迎えの児童に手を振られる天皇、皇后両陛下=7月9日午後、ウランバートル(代表撮影)

――上皇さまは天皇陛下として戦後60年にサイパン、戦後70年の年にはパラオと、激戦地となった南太平洋の島で戦没者を慰霊なさいました。今回、戦後80年の節目に陛下がモンゴルを訪問なさる意義はどのようなことだとお考えでしょうか。モンゴルでも多数の日本人が抑留されましたが、戦争体験者が年々少なくなるなか、戦争の歴史と教訓をどのように語り継いでいくべきでしょうか。

「私と雅子は、戦後生まれであり、戦争を体験しておりませんが、上皇上皇后両陛下からも折に触れて戦時中のことについて伺う機会があり、両陛下の平和を思われるお気持ちをしっかり受け継いでまいりたいと思っております」

戦後80年、平和への思い新たに

「今年は、戦後80年という節目の年に当たり、人々の苦しみや悲しみを決して忘れてはならない地として、これまでに、大戦中に激戦地となった硫黄島や、原爆の惨禍に見舞われた広島を雅子と二人で訪れ、また、激しい地上戦で多くの県民が犠牲となった沖縄には愛子も伴って訪問いたしました。それぞれの地で、戦争を体験された方や遺族となられた方々のお話を伺い、皆さんが経験された想像を絶するような苦難の一端に触れ、深く心が痛むとともに、平和の大切さについての思いを新たに致しました。戦後80年がたち、戦争を実際に知る世代が少なくなってきている中で、戦争を体験した方々から直接話を伺い、その記憶を次の世代に継承し、理解を広めていくことは極めて大切なことだと思っています」

「先ほどもお話ししましたとおり、今回の訪問では、そのような歴史に思いを巡らせつつ、日本人死亡者慰霊碑に供花をし、心ならずも故郷から遠く離れた地で亡くなられた方々を慰霊し、その御苦労に思いを致したいと思います」

「戦後、我が国は、モンゴルを始め世界の各国と共に、国際社会の平和と繁栄のために力を尽くしてきました。これまでに重ねてきた両国の交流の歴史を踏まえながら、今回の訪問を契機として、両国間の友好親善関係が更に深まることを願っています」

――平成19年の御訪問の際は愛子様にとっては朝青龍関や白鵬関の国がモンゴルという頃だったかと思います。今回はご家族3人で愛子様も交えてモンゴルについて、どのようなお話をなさっているか。また、先ほど3問目で、ラオスでは餅米を食べる習慣があると仰っていましたが、前回モンゴルならではの食生活を経験されたと思うんですけれども、その印象ですとか思い出がもしありましたら教えてください。

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相撲通してモンゴルに親しみ

「前回、私がモンゴルに行きました時は愛子もまだ小さく、そして、その頃、非常に相撲にも興味を持っていて、朝青龍始めモンゴルからの力士が活躍していた時でした。愛子も朝青龍の名前がドルゴルスレン・ダグワドルジということも覚えたりして、やはり相撲を通してモンゴルに対して親しみを持っていたような気がします。また、その後はだんだん成長するにつれて、モンゴルの社会などについても、今は日本赤十字社に勤務している立場でも、いろいろと興味を持ってきているような感じがいたします。今回私たち二人で訪問して、そして実際にモンゴルはどういう国であったか、人々の生活、モンゴルの社会、歴史、そういったことや今のモンゴルについて、愛子にもいろいろ話をすることができればというふうに思っています」

モンゴルのチンギスハン国際空港に到着し、民族衣装姿の女性から歓迎を受けられる天皇、皇后両陛下=7月6日午後(代表撮影)

「ラオスについては、食生活の話が出ましたけれども、私が一番強く感じたのはラオスでも餅米を食べるということで、私も実際にラオスで何回か餅米を食べたことがあります。食生活についても、全般的に日本といろいろ共通するところがあったように思いますし、やはり実際にその国に行ってみるといろいろなことを学ぶことができると思って、いい経験になりました。前回ラオスに行く時も話したかもしれないですけれども、ラオスではメコン川が国の中を流れていて、ベトナムのときもそうでしたけれども、メコン川と人々との生活の結び付き、いろんな生活面での結び付きなども含めていろいろ見ることができたのがとても良かったと思っています」

――モンゴルでは馬乳酒ですか。そういった伝統的な食事の思い出があれば。

「モンゴルについては、馬乳酒はちょっと頂いたこともありますし、あとはそのほかにも強いお酒などもありましたが、前回は私は手術の直後だったので、アルコールについて制限があったものですから。食事について言えば、ボーズという中国ではパオズですか、焼き餃子や蒸し餃子のような、そういったものとか、やはり羊の肉などを使った料理が非常に多かったと思います。特に餃子、水餃子、蒸し餃子のような日本の食事とも共通するようなものを頂くことができたというのも一つの思い出になります。やはり食事というのは、その国々の文化を表していると思いますので、私自身もいろいろ世界を回っていくときにその国の食事を頂くことによって、その国の文化の一端に触れることができると思っており、そういったことも楽しみの一つです」

――モンゴルで日本人抑留者の慰霊碑を訪問されますが、今回、前回の皇太子というお立場と違って天皇というお立場で慰霊されるわけなんですけれども、改めてお立場が変わったことによってどのような思いを持ってこの慰霊に臨まれるかというのを、前回とどのような違いで臨まれるかというのをお伺いできればと思います。

「私も前回は、モンゴルで慰霊碑に参拝したのはもちろん初めての経験だったわけですけれども、それからまたある程度年も重ねてますし、モンゴルでのいろんな当時の人々が、日本人が、大変な思いをしたということについてもいろいろと文献を読んだりして少し知識もその頃に比べて増えてきているように思います。ただ、慰霊するという気持ちについては前回でも今回でも同じような気持ちで慰霊の場に臨みたいと思っております」

「先ほど、少しお話ししましたけれども、前回お会いした春日行雄さんという方は、残念ながら亡くなられましたけれども、本当に大変な思いをされたということ、当時モンゴルでも実際にお会いしてお話を伺えたことはとても良かったというふうに思っております」

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