
On July 16, Ambassador to China Kenji Kanasugi takes questions from reporters in Beijing and describes the sentencing to prison of an Astellas Pharma Inc. employee he had just witnessed. (@Sankei by Shohei Mitsuka)
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2023年3月に中国北京市で拘束されスパイ罪で起訴されたアステラス製薬の60代の日本人男性社員に、同市の第2中級人民法院は懲役3年6月の実刑判決を言い渡した。
公判は日本メディアに公開されず、具体的な起訴内容は公表されなかった。
言語道断である。日本人が不当に拘束され、秘密裁判で理不尽な判決を受けたことは容認できない。中国の習近平政権はこの男性社員をはじめ拘束した全日本人を即時解放すべきだ。
判決公判を傍聴した金杉憲治駐中国大使は「有罪判決が出され、極めて遺憾だ」「早期釈放を求め、男性の支援を行っていく」などと語った。
外務省は判決後、男性社員を含む日本人の早期釈放を東京の中国大使館に要求した。今後もさらに強く抗議し、解放を実現しなければならない。石破茂首相や閣僚、与党幹部も声をあげるべきだ。日本人を守り抜く覚悟が試されていると銘記すべきである。
習政権が14年に反スパイ法を施行して以降、少なくとも17人の日本人が拘束され、実刑判決はこれで12人目だ。中国進出の日系企業でつくる「中国日本商会」の幹部も務めたこの男性社員の拘束は現地日本人社会に衝撃を与えた。

今回の判決は、日本企業が社員を共産党独裁の中国に赴任させる危険性を改めて浮き彫りにした。今年5月にも、上海の裁判所が50代の日本人男性に「スパイ活動」を理由に懲役12年の判決を下している。
中国の司法制度は不透明だ。反スパイ法は犯罪行為の定義が極めて曖昧で、拘束、起訴、公判が秘密裏に進む。共産党は司法・立法機関を指導する上位の立場にあり、三権分立など望むべくもない。法が恣意(しい)的に運用されている。
岩屋毅外相は10日、王毅共産党政治局員兼外相と会談し「戦略的互恵関係」の推進を改めて確認した。日本人が解放されない現状で互恵関係推進を謳(うた)うのは、常軌を逸している。国民のために真剣に働くべきだ。
スパイ防止法を持つ欧米諸国は、逮捕した中国人スパイと中国に逮捕・拘束された自国民を交換して救出してきた。日本もスパイ防止法を急ぎたい。公正に運用しつつ、日本人救出にも活(い)かさなければならない。
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2025年7月17日付産経新聞【主張】を転載しています
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