
坂本龍一の企画展「sakamotocommon OSAKA」。1970年の大阪万博のために制作されたバシェの音響彫刻などが展示されている=大阪市北区の「VS.」(南雲都撮影)
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大阪市北区の文化施設「VS.(ヴイエス)」で開催中の音楽家、坂本龍一(2023年死去)の企画展「sakamotocommon OSAKA」では、1970年大阪万博で当時18歳の坂本がその音色に感銘を受けた、金属やガラス管などを組み合わせた「音響彫刻」などを通して、万博が坂本に与えた影響をたどることができる。
音響彫刻はフランスの彫刻家フランソワ・バシェ(1920~2014年)とその兄弟が考案した楽器で、こすったりたたいたりすると音が出る。70年万博に展示され、その音色はその後の坂本の音への探求や音楽制作に影響を与えたとされる。会場には、万博で展示されたバシェの作品と東京芸術大のバシェ修復プロジェクトチームなどが新たに制作した作品が並ぶ。

生前、他分野のアーティストと共同制作を多く行ってきた坂本。アルバム「async」を題材にタイの映画監督・アーティスト、アピチャッポン・ウィーラセタクンが映像を制作した「async-first light」は、低解像度ならではの温かみのある映像が、坂本の音楽の世界観を優しく表現する。
坂本の過去の演奏データをもとに、坂本が長年愛用したグランドピアノで演奏を再現するプログラムでは、代表曲の一つ「Merry Christmas Mr.Lawrence」など5曲が聴ける。細かい鍵盤のタッチやペダルの踏み加減が再現され、目を閉じれば本人が弾いているような感覚になる。万博のチケットなど、1970年前後の坂本の資料や愛読書の展示もあり、文化人としての坂本の多面性に触れることができる。

展示に通底するのは、坂本の徹底した音へのこだわりを再現しようという思いだ。完成した作品よりも「プロセスが面白い」と常に語っていたという坂本。そのプロセスの一端に触れるのに最適な空間が、良質な音響とともに作り上げられている。
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27日まで。午前10時~午後8時(入場は30分前まで)で当日一般2500円ほか。
(産経新聞)
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