
毎日1回は館内にスコールが降る仕掛けを施した=千葉市若葉区の千葉市動物公園内にある動物科学館 (松崎翼撮影)
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開館以来40年ぶりに大改装された千葉市動物公園内の動物科学館(千葉市若葉区)が3月29日、リニューアルオープンした。テーマは生物多様性の宝庫とも評される「熱帯雨林」。音やにおいなど五感で楽しみながら生息する動植物を観察でき、熱帯雨林が抱える環境問題についても深く知れる充実した展示内容となっている。自然に対する好奇心をかき立てる拠点として、幅広い世代でにぎわいそうだ。
ボルネオ島の熱帯林を取材し展示内容を演出
同館は昭和60年の開館以来、大規模改修していなかったため、科学情報も古く、老朽化で多くの展示物が壊れるなどしていた。展示内容を一新するため、昨年1月から休館していた。総事業費は5億8740万円。
リニューアルにあたり、職員らはマレーシア、インドネシア、ブルネイの3カ国にまたがる熱帯林地域のボルネオ島に足を運び、環境を取材。植物を詳しく観察し、展示内容に生かした。館内に流れる鳥のさえずりや虫の声は、現地で録音した音声で、没入感を演出した。

毎日1回は「スコール」
エントランスホールでは、熱帯雨林を代表する高木「フタバガキ」がお出迎え。高さ11・7メートルで、樹皮の質感なども精巧に再現されている。植栽を入れ替えたバードホールでは、日本の動物園で唯一飼育されている、世界最大のハト「カンムリバト」や「ナマケモノ」などが生活。毎日1回は、熱帯雨林特有の大雨「スコール」が降る。
熱帯雨林の土壌分解の様子を迫力ある天井投影で学べる「林床の世界」では、自分がまるで土の中にいるような感覚になる。植物が分布を広げるための動物を利用した拡大戦略について、幅9・4メートルの壁面映像で解説するエリアも新設。肉の腐ったようなにおいでハエを集め、赤い花を咲かせる「ラフレシア」のにおいをかぐこともできる。
このほか、西アフリカに生息する「ニシゴリラ」なども館内で見ることができる。
自然破壊の歴史も解説
熱帯雨林では多様な植物が育まれる一方で、自然破壊が進み、多くの生き物がすみかを追われているのも事実だ。同館では、人間が自然から受けてきた恩恵とともに、自然破壊の歴史なども詳しく解説する。
鏑木一誠園長は「自然環境に対する気づきや学びを発信するのも動物園の使命。環境破壊で動物が追いやられ、生物多様性が劣化している事実をきちんと持ちかえっていただき、行動変容につながるような施設になれば」と話した。
筆者:松崎翼(産経新聞)
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